2020 Fiscal Year Research-status Report
The Local Context in Malaysia and Indonesia and the Japanese Educational Model: An Analysis of Interaction
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20K02557
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
恒吉 僚子 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (50236931)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 教育トランスファー / 日本の教育モデル / 社会性と情動的学習 / ローカルとグローバル / マレーシアの教育 / インドネシアの教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度には、新型コロナウイルスのパンデミックによりマレーシアやインドネシアのみならず、各国で学校が休校になった。そのため、当初の予定では本研究の研究代表者が海外に行き、日本の教育モデル(tokkatsu)のインドネシアとマレーシアにおいての導入期を分析するはずであったが、日本と両国との往来が止まり、対象両国では学校の休校が続き、当初予定していた形での調査は不可能となった。 しかしながら、新型コロナウイルスの世界的流行は、思わぬ形で日本版全人的な教育モデルtokkatsuモデルの主要要素である、社会性や情動的な学習(social and emotional learning、 SEL)や協同的活動の必要性を国際的に印象付けることとなった。 パンデミックのもと、世界各国で教育のオンライン化が急速に進められが、インターネットにアクセスがない人々の「排除」や、南北格差、社会内での格差とその拡大もまた、以前よりも広範に議論されるようになった。 こうした中で、本研究では研究の趣旨に沿って、コロナ禍において、日本の教育(特に特別活動)がどのように新しい生活様式に適応しているかを調査、さらにインドネシア、マレーシア、エジプトの教育関係者、政策関係者や研究者によるオンライン意見交換を行ない、動画や報告書にまとめて一部は公開した(http://www.p.utokyo.ac.jp/~tsunelab/tokkatsu/videos/ 2021/03/31/511/)。 さらに、ユネスコ等の国連機関、OECDにおいてもコロナ禍における各国の実践を発信しているが、コロナ禍における全人的な日本の教育モデルがどのように展開しているか(https://oecdedutoday.com/wp-content/uploads/2020/07/Japan-Tokkatsu.pdf)を国際発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画が「やや遅れた」理由は新型コロナウイルスの流行により、マレーシアでもインドネシアでも学校が閉まり(学校再開をしても再休校となる等)、通常の教育ができなくなり、日本の教育モデルを入れる過程も中断したことと、日本からいずれの国への渡航もできなくなったことにある。 特に本研究で焦点としている日本のtokkatsuモデルは、その定義からして従来は子ども同士の対面的な密状態の中での関わり合いを通して成り立ってきた。そこでの子ども同士の関係によって、社会性の育成や、成長が期待されてきたのである。パンデミックにおいては回避される活動である。 こうして、本研究の当初の予定であったマレーシアとインドネシアで日本モデルの採用や変容についての分析はできなくなったが、逆に、日本においてはもともとのtokkatsuモデルがコロナ禍というモデルの中核部分にある「三密」状態が難しい状況になる中で、どのような調整がなされるのかの観察・教師インタビューをすることによって、モデルの核心部分の理解を深める機会となった。 また、日本の公立学校は全体的には他先進諸国に比べてオンライン化への動きは遅かったものの、一部の地域ではオンラインと対面の両者を組み合わせてハイブリッドな特別活動の実践をしたり、学校が再開してからは工夫をしながら運動会他の行事をこなし、そうした新しい形でのtokkatsuモデルの方向性を見る機会にもなった。 こうした理解はマレーシア、インドネシアの学校がモデルの採用を行なう段階になった時にはその変容を理解する上でもプラスに働くと同時に、それぞれの社会・文化の中にある類似した志向を持つ「伝統」への視点にもつながると思われる。そこで本年度の評価は、全面的に遅れたのではなく、「やや遅れた」という評価になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年4月現在でも、日本から海外への渡航も日本への入国も制限され、マレーシアの教育もインドネシアの教育も、通常の姿を取り戻してはいない。 しかしながら、教科指導と共に社会性や心のケアの問題はいずれの国でも関心事であり、それがそれぞれの文化・社会的文脈の中でどのような形をとるのか、そこに日本のモデルが入ることによってどのような現地化のプロセスが見られるのかを教員インタビューを通して把握して行き、可能になり次第、渡航したいと思っている。 本年度中には、去年パンデミックによって日本への渡航が実現しなかったマレーシアでの海外協力者も来日すると思われ、共同研究を進める予定である。また、第二回のオンラインの意見交換、そして、二年度の計画に組み込まれている教育トランスファーの図書についても、予定通り進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルスによって渡航を伴う計画を変えざるを得なかった。それに関連した費用の一部を繰り越しした。
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Research Products
(11 results)