2021 Fiscal Year Research-status Report
Eco-DRRの視点で自然災害からの学校防災・減災を具現化するための実践的研究
Project/Area Number |
20K02563
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
長島 康雄 東北学院大学, 文学部, 教授 (50749158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
崔 玉芬 関東学園大学, 経済学部, 准教授 (10739155)
松本 秀明 東北学院大学, 教養学部, 教授 (30173909)
渡邉 剛央 岡山理科大学, 獣医学部, 准教授 (30739173)
平吹 喜彦 東北学院大学, 教養学部, 教授 (50143045)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Eco-DRR / 自然災害 / 学校防災要録 / 学校管理職向け研修会プログラム開発 / 地方気象台との連携 / 大川小学校判決の分析 / 義務教育の学校防災意識尺度の開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍の鎮静化を受けて、Eco-DRRの視点から、東日本大震災の被害を受けた東北地方太平洋沿岸部の小学校、中学校を視察するとともに、小学校・中学校・高等学校の学校避難訓練をドローンを用いて撮像し、最適な避難行動についての分析を行った。課題として見つかったのは、中程度の被害であった学校の立地ならびに学校施設そのものが避難を想定した構造に整備されていないという点である。壊滅的な被害を受けた学校は廃校、もしくは高台移転を行っているため、同じ規模の災害が発生したとしても被害ゼロを実現できる形で再開されているが、床下浸水程度の被害で収まったところに課題があることが判明した。Eco-DRRの視点による啓発活動が必要とされること、啓発のための資料提供が必要であることが判明した。 石巻市立大川小学校の最高裁判決、仙台高裁判決の分析を行い、その結果を論文として学会発表ならびに学術雑誌にその成果を報告した。また、宮城県内の学校管理職を対象にした研修会において、その成果を啓発普及させる機会を多数実施できた点が、大きな成果である。研修に参加した管理職の事後の感想の分析を進めており、より良い研修プログラムの開発に着手した。 Eco-DRRの視点から学校防災・減災体制を見直し、自然の理にかなった新たな方策を開発・試行するための方策として、仙台管区気象台ならびに宮城県丸森町教育委員会と協力して、「学校防災要録」を開発し、2021年度に試行した。学校の教職員が最長でも8年から10年で異動になることから、自然災害の知恵の蓄積が難しい現状を打開するための記録様式を提案し、その成果を日本義務教育学会紀要に報告した。また、教職員が、生態系の変化を読み解くための手法として、地方公共団体が公開しているweb-GISの植生情報、地形情報を組み合わせることで、自然災害リスクの高い立地を推定できることを明らかにして野外文化教育学科紀要に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災において大きな被害を受けた大川小学校の高裁判決・最高裁判決の分析を行い,自然災害に対して教育委員会・学校・教員の果たさなければならない法的な責務を明確にすることについては複数の論文を公刊し、予定通りの成果を上げることができた。 初年度はコロナ禍が拡大傾向にあり、フィールド調査が困難であったが、研究年度2年目は、感染拡大の収束傾向に対応する形で、本研究の主たる目的の「Eco-DRR(健全な生態系が有する防災・減災機能を積極的に活用して災害リスクを低減させるという考え方)の視点から学校防災・減災体制を見直し,自然の理にかなった新たな方策を開発・試行する」ための研究を遂行することができた。各専門機関との連携や東日本大震災で被災した小学校、中学校等へのフィールドワークが順調に実施できた。そのフィールドワークの成果を取り入れた形で「自然災害対応方針決定フォローチャート」「学校防災検討規準」「学校防災検討委員会」「学校防災要録」「学校防災要録」を開発し、1年間にわたって試行した。最終年度の報告書で、その成果を整理する。
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Strategy for Future Research Activity |
学校教職員の責任を果たすための手法の開発が次の段階である。具体的には、学校防災・減災のために,Eco-DRR(健全な生態系が有する防災・減災機能を積極的に活用して災害リスクを低減させるという考え方)の視点から学校防災・減災体制を見直し,自然の理にかなった新たな避難行動の方策の開発・試行することである。 具体的な方策の1つとして、学校教職員による学区の自然災害記録簿の必要性を明らかにし、「学校防災要録」を開発し、土砂災害危険地域の山間部の学校として宮城県伊具郡丸森町の小学校、中学校で試行した。最終年度である2022年度は津波・高潮の被害の可能性が高い宮城県仙台市沿岸部の中学校で「学校防災要録」による効果検証を行う予定である。この「学校防災要録」を活用した避難行動の検討を最終年度に実施する。 九州の豪雨災害の現地調査ならびに学校の対応についてのフィールドワークを実施し、様々な自然災害への学校防災・減災の課題の収集に努める予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた熊本の土砂災害地域のフィールドワーク、南海トラフ地震エリアのフィールドワークが、コロナ禍のために実施できなかったことが次年度使用額が生じた理由である。コロナ禍の収束を受けて、研究最終年度に実施する計画で準備を進めている。
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