2021 Fiscal Year Research-status Report
学校制度改革にみる現代日本教育政策決定過程の比較事例研究
Project/Area Number |
20K02565
|
Research Institution | Chuogakuin University |
Principal Investigator |
谷口 聡 中央学院大学, 商学部, 准教授 (40636247)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 学校制度の多様化 / 学校教育の情報化政策 / データの標準化 / 文科省固有の役割 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、本研究が分析対象とする2000年代以降の学校制度改革のうち、義務教育制度及び学校教育の情報化に関わる政策の展開過程および背景を分析した。 義務教育制度については、義務教育学校新設の政策目的に着目し、一方で、1960年代から続く能力・適性に応じた教育のための学校制度の多様化があり、他方で、2000年代以降の地方自治体における特例的な教育課程編成に整合する学校制度改革があることを明らかにした。 学校教育の情報化政策については、2010年代後半以降、同政策がいかなる主体によってどのように形成されているのかを分析した。結果、第一に、学校教育の情報化政策の目的は、学習・教育の方法やその機会を拡張するための条件整備から、情報通信技術によって収集、分析されるデータを軸に教育の実践と政策を再編することへと変容していること、第二に、その変容の背景には、学校教育の情報化政策を含むデジタル社会形成政策が成長戦略の主軸であることから、民間によるイノベーションを生み出すための国家による環境整備、つまり社会のあらゆる領域におけるデータの標準化及び規制・制度改革があること、第三に、社会の諸領域におけるデータの標準化及び規制・制度改革は、成長戦略を主導する首相官邸の枠組みのもとで形成され、その枠組みがさらに強化されていること、第四に、文科省は、ラジカルな教育政策を進めようとする内閣府に対抗した2000年代とは異なり、首相官邸が主導する成長戦略の枠組みから落ちこぼれないよう、これに積極的に寄与する政策を立案し、一部実施していることを明らかにした。その上で、文科省固有の役割について考察し、学校教育の情報化政策を、教育現場の自律的・専門的な判断によって新たな教育方法や教育機会の拡張が実現できる条件整備へと定位すべきと課題提起した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2000年代以降の学校制度改革のうち、義務教育制度については当初の予定通り、各政策主体の政策提言、政策決定過程の議事録の分析などを行うことができた。また、学校教育の情報化政策に連動する学校制度の改革構想について、分析することができた。他方で、教育政策決定過程の全体像の把握および2000年代と2010年代の比較については、未着手に終わっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、2010年代後半から立案・構想されコロナ禍を契機に急展開している学校教育の情報化政策に着目し、その展開過程および背景を分析する予定である。これは、本研究の当初計画にはなかったものであるが、今後数年先の学校制度に相当のインパクトをもたらす可能性があり、学校制度改革に現れる政策決定過程の変容を明らかにするという本研究の目的において重要な研究課題だと思われる。 加えて、この間実行できていない2000年代と2010年代以降の政策決定過程の比較を行い、その時代的特徴の把握及び転換の背景を明らかにする。また、政策決定過程の構造転換が、地方自治体における政策形成にどのように影響しているのかについて、実地調査をもとに分析する。
|
Causes of Carryover |
主な支出として予定していた学会参加等による旅費の支出がコロナ禍によって支出不可となったため、予定よりも次年度使用額が多くなった。次年度は、コロナの状況次第であるが、学会参加、加えて、学校制度改革が先行する地方自治体及びオルタナティブな教育実践をする学校への実地調査に必要な旅費の支出を予定している。
|