比較教育研究におけるISCED活用の可能性―日蘭の職業教育プログラムを事例として

2022 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 20K02573
• Research Institution: Niigata University of Health and Welfare
• Principal Investigator: 吉田 重和 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (30549233)
• Project Period (FY): 2020-04-01 – 2024-03-31
• Keywords: ISCED / 国際標準教育分類 / 比較・国際教育研究 / 公教育制度 / 学校系統図 / 教育プログラム図

Outline of Annual Research Achievements

各国の教育事象を横断的に分析するために定められた国際標準教育分類（ISCED）は、教育政策上重要な指標であるにも関わらず、研究面での活用は限定的である。この状況を受け先行研究では、ISCEDにより各国の教育プログラム及び接続状況の図示が可能であり、従来使用されてきた学校系統図の課題が補われる可能性が示されているが、その具体については未だ明らかにされていない。
以上を踏まえ本研究課題では、学校系統図に内在する課題を克服し、公教育制度を正確に図式化する方策の一つとして教育プログラム図を捉えている。その上で2022年度は、ISCEDを活用した教育プログラム図の事例として、オランダの公教育制度の作図に着手し、教育プログラム図の特徴及び活用に向けた道筋の具体を検討した。作図にあたっては、2021年度の取り組みと同様に、ISCED2011の関連資料であるpotential pathwaysのフォーマットを参照し、ブラウザ上で操作可能な無料作図ツール「diagrams.net」を用いて、オランダの教育プログラム図をA4版にて試作した。
試作の過程において、ISCEDを活用した教育プログラム図の課題が改めて確認された。オランダのように多様な教育プログラムが展開されている公教育制度を図示しようとすると、図中の情報量（各プログラムに与えられている3桁のコードや接続を示す矢印など）が多くなり、結果として作図が困難となるだけでなく、視認性も悪化することが明らかになった。これらの課題は図式化する上で避けて通れないものであることから、①他のツールを利用する、②図中に示す情報量を精選するという二つの観点から改善の方向性を検討することとした。

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

長引くコロナ禍により、当初予定していた現地調査について、実施の目途が立てられなかった。文献調査など代替の方法を活用してきたが、入手できる情報に質的・量的な限界があり、その点が進捗状況の遅れに繋がった。

Strategy for Future Research Activity

コロナ禍の収束状況に鑑みて、現地調査の実施を検討する。同時に、事態の急変に備え現地調査に代替する方法も引き続き検討し、研究計画全体の見直しに繋げる。現地調査の実施が難しい場合には、人的ネットワークを活用するなどして、収集される現地情報の質的・量的な水準を維持できるよう努める。

Causes of Carryover

長引くコロナ禍による教育・研究体制の変化により、研究内容に遅れが出たことが助成金の支出にも影響している。2023年度は最大の目的であるプログラム図開発に注力する予定であり、繰り越された助成金もこれらの作業に伴う経費に充てる。