2020 Fiscal Year Research-status Report
Research for Recognition and Evaluation on Sexual Orientation and Gender Identity (SOGI) in the View of Sociology of Education
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20K02584
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岩本 健良 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (50211066)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 性的指向・性自認(SOGI) / LGBT / 教科書 / 辞典/事典 / 採用試験適性検査 / 正統的文化資本 / 科学社会学 / 再生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
文化資本論において「正統文化資本」とされる、教科書(精神医学教科書、中学・高校の教科書)や辞典/事典の記述、地方自治体の教員・公務員・警察官等の採用試験適性検査などの内容における性的指向・性自認(SOGI)の扱いを考察した。教科書や事典等の中には、性的指向・性自認に関する記述について、大きな誤りが専門家のチェックが適切になされずに残るものがあり、科学的に正しい知識の伝達がなされないばかりか、差別や偏見を再生産しかねない状況も存在していることを見出した。自治体の採用試験で用いられる適性検査の中には、同性愛や性別違和を異常としてマイナス評価するMMPIを用いているものが散見された。これらの背景として、(1)SOGIに関し、各事例における専門家とされる人々の学識や専門職倫理の問題、(2)多くは正当化されて力の弱い側にある生徒・学生・受験生(者)・受診者に課されるために批判や問題提起が行われにくい社会構造にある。専門家が知識をアップデートして社会に普及・還元するという、科学に期待されるべき仕組みが十分に機能していないという大きな課題があり、その克服のために外部の第三者による目も組み入れた、開かれた制度にしていく必要性を示した。 このほか、共同研究での調査データに基づき、LGBTのジェンダー・家族・性的マイノリティについての意識、学校でのSOGIに関するいじめの長期的影響の持続、オフィスにおける男女共用トイレの利用意向、日本において調査票調査で性的指向・性自認を捉えるためのベストプラクティス、同性婚に関する意識と権威主義の関連に関して、分析・報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の2020年度は、これまでの基礎的分析を整理し8本の学会報告等を行った。世界規模での新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、予定していたドイツでの国際シンポジウムが中止となり、また資料収集のための出張が困難となり、計画に変更が生じた。成果の一部は、講演・マスコミへの取材対応・情報提供を行い社会還元に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の流行による移動の制約の影響を避けるため、また2021年度は新学習指導要領に基づく新教科書が高校まで見本本として提示されるので、これに合わせて教科書の内容分析を行うとともに、海外の研究者と情報交換を行い比較研究する。また採用試験適性検査に関し、都道府県・主要自治体を対象として郵送調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症のパンデミックにより、計画していた海外での国際シンポジウム報告が中止となり、出張での資料収集が困難となったこと、参加・報告した学会大会がいずれもオンライン開催となったことが主な要因である。
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Research Products
(11 results)