2023 Fiscal Year Research-status Report
教職課程コアカリキュラム導入前の新任教師のライフヒストリーに関する研究
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20K02599
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Research Institution | Kansai University of International Studies |
Principal Investigator |
川村 光 関西国際大学, 教育学部, 教授 (50452230)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 教師 / 力量形成 / ライフコース / 国際比較 / イタリア / 日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の教師のライフヒストリーを相対化することを目的に、2023年度は日本とイタリアの教師の力量形成の比較研究を行った。 具体的には、2010年代後半の日本とイタリアの公立小・中学校教師を対象とした質問表調査の結果を比較することによって、両国の教師の被教育体験期と教職生活の中で意義あることを相対化し、両国の教師の特徴を捉えた。 その結果、次のことが明らかになった。第一は、両国の教員養成制度の差異が進路決定の時期の違いとして表れており、教職を目指す者は、進路決定を強く迫られる時期の影響を受けることである。第二は、教職に就くきっかけとして、日本の教師が子ども時代に出会った身近にいる者の影響を指摘しているのに対し、イタリアの教師は子どもと直接接した経験とアカデミックな経験をあげていることである。第三は、教職活動を進めていく上での基礎を培うにあたって役立っている経験については、日本の教師が大学時代までの人との交流経験を、イタリアの教師は大学時代のフォーマル、インフォーマルなアカデミックな学修経験を指摘していることである。第四は、自身の教育実践や教育観に影響を及ぼしていることについては、日伊の教師に共通して、学校内外での人々との出会いや研究活動、教育実践上の経験をあげていることである。第五は、日本の教師は私的経験を教職生活と結びつけることによって力量形成を行うに対し、イタリアの教師はそういうことはあまりなく、社会的活動や、学校外での研究活動を自身の力量形成にとって意義深いと感じていることである。 以上のことから、日本には、親密な人間関係と総合的な人間性を基盤とする教師文化があるのに対し、イタリアでは、アカデミックな基盤のもとでの社会的関心の高い教師文化があることが推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのコロナ禍の影響と時間的制約などからインタビュー調査を1地域に焦点化し、調査研究・分析を行うことにした。また、教師のライフヒストリーを相対化し、新たな視角からそれを分析・考察するために、過去に実施した日本とイタリアの教師の力量形成に関する質問紙調査データを分析し、日本の教師のライフヒストリーの特徴を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である今年度は、教職課程コアカリキュラム導入前に教員養成教育を受けて教師になった者たちの1年目と2年目の語りを比較し、彼らの語りの様式の変容について検討する予定である。なお、それを行うにあたって、これまでの海外の教師の力量形成との比較研究の知見を踏まえつつ考察を行う。 さらに、将来的には教職課程コアカリキュラム導入後の教師との比較を行い、そのカリキュラムが教職についている者たちにどのような影響を与えているのか究明していきたい。
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Causes of Carryover |
これまでのコロナ禍の影響により研究計画を変更したため、インタビュー調査に関わる経費にも変更があり、次年度使用額が生じた。次年度はこれまでのインタビュー調査のフォローアップ調査などを行う予定である。
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