2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Regional Harmonization of Secondary Education in Oceania
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20K02605
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
奥田 久春 三重大学, 教養教育院, 特任講師(教育担当) (30535373)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中等教育修了資格 / 校内評価 / カリキュラム分析 / 学校に基礎を置く評価 / 地域的調和化 / SOLO Taxonomy / ニュージーランド / オーストラリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績として、大洋州諸国で行われている中等教育修了資格試験での「校内評価」を包含したカリキュラムの内容について分析を行った。特にサモアにおける中等教育修了資格であるSSLCの理科系科目、社会科系科目の単元構成と、2013年まで行われていた大洋州島嶼諸国共通の中等教育修了資格であったPSSCでの単元構成、サモア中等教育のナショナルカリキュラムの内容とを相互比較することで、SSLCがPSSCの踏襲よりもナショナルカリキュラムとの整合性が見られること(ローカル化)を明らかにした。その一方でサモアではトンガなど他の島嶼国でも用いられているSOLO Taxonomyに基づいたカリキュラムの構造になっていることを分析した。これらの結果を日本比較教育学会第57回大会にて発表した。 また、島嶼国へのニュージーランドの中等教育資格NCEAの影響を考察するべく、NCEAの各科目のスタンダード、校内評価の内容などを分析し、教育目標・評価学会第32回大会にて発表した。論文としては『三重大学教養教育院紀要』第7号にて発表した。 更に、オーストラリア各州の中等教育修了資格で行われている「学校を基礎に置く評価」とニュージーランドや島嶼国で行われている「校内評価」との比較分析を行った。その結果、島嶼国に影響を及ぼすと考えれる内容や方法は見いだせなかったが、評価制度の類型化を行うことができた。これについては日本教育学会第80回大会において発表した。 関連して、オセアニア教育学会にて大洋州諸国の大学入試に関する共同研究を実施しており、島嶼国での中等教育修了資格の特徴について高大接続の観点から考察を進め、同学会第25回大会の企画セッションにおいて発表した。 このように、中等教育の地域的調和化についてニュージーランドやオーストラリアも含めそれぞれのカリキュラムと評価方法に注目して研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れている最大の理由は、新型コロナウィルス感染拡大に伴い、依然として各国での調査ができなかったことである。そのためにインタビュー調査などが行えず、収集した資料の分析に留まっている。特に昨年度からの課題である、トンガなどでの「校内評価」の基準、SOLO Taxonomyを用いたカリキュラムの内容、それらの実態とローカル化の状況が未解明のままである。 しかしながらその分、教科教育の原理や教科書、カリキュラム研究の視点を取り入れて、既に収集した資料からサモアやニュージーランドの中等教育の各科目のカリキュラム内容を分析することに十分な時間を充てることができている。 また、PSSCには見られなかったSOLO Taxonomyに基づいた、サモアのカリキュラムの構造を分析したり、ニュージーランドのNCEAのパフォーマンス課題の内容やカリキュラムの構造を分析したりして、それらの潜在的な共通点と相違点を明らかにしている。 加えて、インターネットを通じて情報を入手しやすいオーストラリアの各州の中等教育修了資格や評価方法の影響についても研究を進め、制度面だけでなくカリキュラムの観点から地域的調和化の枠組みを提示するように研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染症の収束およびトンガ沖火山噴火による災害からの復興を望み、引き続き海外調査を進めることを前提に研究を進めていく。最終年度であるが、資料の分析に留まらないよう、サモアとトンガ等での教育省担当者へのインタビュー調査、各学校での授業方法や意識について調査を行う予定である。 これまで進めてきたカリキュラム分析の結果を枠組みにして、特にトンガでにおいては2013年以降の中等教育のローカル化の変遷過程と政策意図、制度的実態、カリキュラム開発の仕組みと特徴について政策資料の分析やインタビュー調査を行っていく。また、サモア、トンガではともに学校を訪問し、パフォーマンス課題の内容と実際の校内評価の実態について観察調査やインタビュー調査を行う。他の島嶼国についてもフィジーの南太平洋大学教育学部の研究者や大洋州の教育の地域機関であるEQAPの職員を通じた情報収集を行っていく。 また、最終的な結論への道程として、上記の南太平洋大学教育学部の教員との研究内容に関する意見交換を行うとともに、EQAP職員への地域的調和化に関するインタビュー調査も行っていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大に伴って、予定した海外での調査や学会発表のための渡航ができなかったこと、また国内においても予定していた日本比較教育学会、日本教育学会、教育目標・評価学会、オセアニア教育学会が全てオンライン開催となり、参加費を除いて旅費に関する支出を執行できなかったことによる。 次年度では、新型コロナ感染症の収束とトンガ沖火山噴火による災害の復興を望みつつ、引き続き予定通り海外調査や学会発表のための渡航や移動を計画していく。これまでの研究計画を遂行するため渡航滞在期間を延ばす予定である。それでも期間が限られる調査となり、効率的に行うことが求められるため、調査協力者を募り謝金に充てたりする。また最終年度として研究成果の発表のために支出していく予定である。
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