2021 Fiscal Year Research-status Report
A Comparative Study of Moral Education for Diversity in Southeast Asian Countries
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20K02611
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Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
鈴木 康郎 高知県立大学, 地域教育研究センター, 教授 (10344847)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 道徳教育 / 道徳の教科化 / 東南アジアの教育 / タイの教育 / マレーシアの教育 / インドネシアの教育 / 価値多様化 / 特別の教科道徳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本で「特別の教科」として戦後初めて教科化された道徳教育に対し、既に教科として長く実施されてきた東南アジアにおける道徳教育をめぐる議論や実施体制に着目して実証的に比較検討することにより、教科としての道徳のあり方について、課題と展望を示すことにある。対象はタイ、マレーシア、インドネシアの3カ国であり、異なる状況で道徳教育が実施されている。研究の成果として、試行錯誤段階にある日本の道徳教科をいかなる形で実施するのかについて基本的視座を提供することが見込まれる。さらに本研究が目指す「教科としての道徳教育の比較分析」は、単に当該国の道徳教育の実態を解明するのみならず、ASEAN統合やグローバル化の進展により文化・人的交流の機会が飛躍的に増大する中、「国民統合と多様な価値の共存」という相反する課題に対応し ようとする道徳のあり方について、比較研究を通して新たな理論的視座を提供しうる。 第2年度にあたる2021年度は、「各国における道徳教育の基本理念およびその実施体制の分析」を中心とした計画を立てた。具体的には、(1)政策理念や各実施時期における具体的な政策文書、内外研究資料の収集・分析、(2)道徳教育の実施体制の見直しや変更に関わる政策資料や研究調査資料の収集・分析を行うこととし、3カ国の政策立案関係組織(主に中央行政官庁の研究・政策立案部門や道徳教育推進組織)に対し現地調査を実施することとしていた。 以上のように、当初計画においては、研究代表者が現地実態調査を実施し、インタビューや現地でのデータ収集等を行うこととなっていた。しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大が収束を見せず、現地調査の実施を断念した。代替的な研究方法としてオンライン会議システムの一部整備を行い、現地調査協力者へのオンライン調査を実施した。関連文献については、国内で入手可能なものを中心に収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画に則り、オンライン調査と国内での資料収集という限られたリソースを活用して、おおむね以下の内容について、明らかにしてきた。 (1)政策理念や各実施時期における具体的な政策文書、内外研究資料の収集・分析 (2)道徳教育の実施体制の見直しや変更に関わる政策資料や研究調査資料の収集・分析 しかしながら、当初予定していた現地実態調査を実施することができなかったため、十分なデータを収集できたとはいいがたい。そのため、2021年度は関連学会において予備的考察として研究成果報告を行った。2022年度以降も適宜こうした修正を加えながら研究を遂行し一部成果を報告する見通しである。 研究の性質上、現地調査は極めて重要であるが、日本および現地の感染拡大状況によっては、現地調査の見込みが立たない可能性があり、こうした事態を想定した代替的かつ柔軟な調査計画を立てる必要性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
第3年度にあたる2022年度は、当初、各国における道徳教育の実践について、宗教・道徳教育重点校と一般の国公立校との比較を踏まえてフィールドワークを実施し、各国における道徳教育の実践にみる特色を明らかにすることを計画していた。その上で、アジア諸国における道徳教育に関して、政策理念、実施体制、学校での実践の各側面について総括的に分析することにより、「多様な価値の共存」という観点からその有効性と課題に関して具体的かつ実践的な提言を行い、研究成果を広く公表していくこととしていた。 ただし、現地調査をはじめ昨年度(2021年度)までの研究が計画通りに進捗していないため、2022年度は、昨年度までに未達成の研究計画を遂行することを優先して、研究を推進する。 また、研究が完遂していない状況においても、研究成果データベースの構築と学会等での研究成果発表を行うことにより、研究成果を積極的に還元するよう努める。 なお、2022年5月の時点で新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、年度内に調査対象国での現地調査を行うことが困難であることが想定される。そのため、感染拡大の収束が見られず、現地調査の見込みが立たない場合、Zoomなどのweb会議システムを活用したオンライン調査、および現地調査協力者に調査代行を依頼することなどにより対応し、状況に応じて研究計画を柔軟に変更することにより対応する。
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Causes of Carryover |
2021年度は、複数の調査対象国で現地調査を実施する予定で研究計画を立てていたが、実際には新型コロナウイルス感染拡大状況が収束せず、現地調査を実施することができなかった。 感染拡大状況を睨みながら、2022年度は現地調査実施の可能性を探る。現地調査が実施できた場合は、昨年度(2021年度)に予定していた調査を含めて、2年度分の項目について調査を実施する。現地調査が実施できない場合は、Zoomなどのオンライン会議システムを整備することにより、円滑にオンライン調査が進められるよう助成金を使用する。なお、オンライン調査によって得たデータ記録とその共有のため、データベースの整備を要する。研究成果の一部は、国内学会において成果発表を行う予定である。
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