2020 Fiscal Year Research-status Report
小中学生のインターネット利用に対する保護者の介入行動の実態
Project/Area Number |
20K02613
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Research Institution | Seigakuin University |
Principal Investigator |
西村 洋一 聖学院大学, 心理福祉学部, 教授 (70406809)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インターネット利用 / 小中学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,日本の小中学生のインターネット利用に対して保護者がどのような介入行動を行っているのか,その詳細を明らかにすることである。青少年のインターネット利用におけるリスクが指摘されており,教育場面においてもその対応が迫られている。その際,児童生徒のメディアリテラシーを高めるといった個人に向けた対応だけでなく,保護者等の関わり,すなわち介入行動がどのように行われているかという視点も重要なものとなる。しかしながら,保護者の介入行動に関する本邦における知見は多いといえない状況であり,まずはその実態の把握が肝要である。 令和2(2020)年度においては,インターネット利用への保護者の介入に関する文献調査を行った。特にヨーロッパにおいては一定の研究の積み重ねがあり,保護者の養育スタイルと介入行動の関連についての検討が行われている。本研究では養育スタイルとの関連については必ずしも焦点とはしていなかったが,海外の先行研究との比較を行うためには,ある程度視野に入れる必要性が理解された。 また,文献研究を行いながら,小中学生の保護者を対象とした調査の準備を進め,実施した。当初の計画としては,面接調査により介入行動の実際や関連するエピソードを聞き取ることを考えていた。しかし,コロナ禍の状況の中では面接調査の実施が困難なところがあったため,ウェブ調査の実施に置き換えた。家庭内でのインターネット利用に対するルールの設定時期やルール設定以外の介入行動,インターネット利用に対するリスク認知などに加え,最終学歴や世帯収入などを尋ねた。得られた知見は令和3(2021)年度の調査計画に反映させる。また,令和3(2021)年度の学会で発表を行い,討議の結果も踏まえて研究の次の一歩につなげていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2(2020)年度においては,令和3(2021)年度からの調査実施に向けて文献研究と面接調査によるベースとなる知見の集積を行うことを計画していた。しかし,コロナ禍の状況下において研究遂行にも支障をきたす点があり,特にコロナ禍の特徴から面接調査については差し控えた方がよいと判断された。そのため,ウェブ調査への変更を余儀なくされた。質問と応答の中でさらに問いを深められる面接調査と違い,ウェブ調査においてはある程度定まった回答しか得られない面があるが,その一方でより大きなサンプルサイズ(n = 700)で,そして日本中のさまざまな地域(具体的には,北海道・東北,関東,中部,北陸,近畿,中国・四国,九州・沖縄)の保護者から回答が得られた点は大きなメリットであったと考えらえる。特に本研究の目的は保護者の社会的属性を分析に入れることを焦点の1つとしているため,2021年度以降の調査研究の先取りができたともいえる。しかし,面接調査による深堀ができなかったという点は否めないため,ウェブ調査の結果をふまえながら2021年度に面接調査実施の可能性も考える(ウェブ調査を実施した際に面接調査への参加の意向も尋ねその可能性を担保している)。2021年度の予算全体のバランスを見ながら実施の検討をしていきたい。 令和2(2020)年度においては,研究成果発表の点で不足があったが,上記の調査研究により得られた成果を令和3(2021)年度に積極的に発表していく。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3(2021)年度においては,前年度の文献調査,ウェブ調査の結果に基づき,保護者の介入行動を測定する尺度の作成を行うことが大きな焦点となる。項目の選定には,申請者だけでなく,親子関係やメディア研究の専門家の意見も聞きながら,妥当性の高いものとなるよう配慮しながら進める。2020年度の調査結果を学会発表に反映させるようにする。また,可能であれば保護者を対象とした面接による聞き取りも実施し,その結果も取り入れたい。それらをふまえ,ウェブ調査(リサーチ会社への委託により実施)を用いて,作成した尺度の信頼性,妥当性を検討するための調査を実施する。対象は小中学生の保護者とし,令和2(2020)年度の調査と同様に多くの地域の保護者が対象となるよう計画する。 令和3(2021)年度においては,前年度までに得られた成果に基づいた発表を積極的に行い,そこでの討議の結果を予定された調査に反映させる。
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Causes of Carryover |
令和2(2020)年度においては,コロナ禍の状況をふまえて面接調査からウェブ調査に変更したため,交通費や謝礼の分がかからなかったことが次年度使用額が生じた理由である。そのうちの大部分はウェブ調査の費用に充てており,研究としても変更したことに意味はあるが,面接調査が実施できなかったデメリットもあるため,令和3(2021)年度においては,新型コロナウィルスの感染状況を見ながら,面接調査の実施の可能性も探りたい。あるいは,インターネット利用への介入にかかわる関係者への聞き取りなどにあて,令和3(2021)年度の研究実績により資するよう使用する。
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