2022 Fiscal Year Research-status Report
Early School Leavers' Transition from School to Work
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20K02620
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
佐野 正彦 大阪電気通信大学, 共通教育機構, 教授 (00202101)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | youth transition / UK / labour market / further education / longitudinal survey / panel survey / 継続教育 / 縦断的調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「英国における早期離学者の仕事への移行」に関して、あまたある既存のパネル調査を使って詳細な分析を行うことと、継続教育カレッジに在籍する若者へのインタビューを中心にした質的調査を実施することであった。コロナ禍という状況で、本年度も、既存の大規模パネル調査による新たなデータの獲得と調査方法や内容の吟味、さらに、その調査データを活用した先行研究の整理、検討を中心に行った。その上で、「英国における早期離学者の仕事への移行」に関わる、残された研究課題を洗い直し、その課題について、これらのパネル調査データを用いて再分析を進めた。 各コーホートの調査対象者が1万人以上であり、誕生から生涯にわたって追跡する全国的な大規模なパネル調査だけでも、The 1958 National Child Development Study (NCDS)、The 1970 British Cohort Study (BCS70)、The Millennium Cohort Study (MCS)、Next Steps、という4つの調査が、現在も遂行中である。英国では、これらのデータにもとづく世代間の比較研究や、国際間の比較研究も展開している。本年度はロンドン大学にある縦断的調査研究の拠点ともいうべき、Cohort and Longitudinal Studies Enhancement Resources (CLOSER)の協力も得て、パネル調査を活用したこれまでの若者の仕事への移行にかかわる分析や成果について整理・検討を進めた。 本年度後半には、レスター大学の研究者と日英の若者の移行研究の比較を行う共同研究を再開し、また、継続教育カレッジの4つのキャンパスを訪問し、今後の参与観察や学生へのインタビュー調査の実施のための協力要請など、実地調査の準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍という状況下のため、本研究の一つの目的である、継続教育カレッジでの参与観察や若者へのインタビュー調査は、継続教育カレッジを訪問して協力要請した準備段階にとどまった。2023年3月に、継続教育カレッジの訪問がかない、レスターにある4つのキャンパスを訪れ、次年度に向けての調査のお願いを兼ねて、カレッジの概要等を調査した。 本研究のもう一つの目的である、既存のパネル調査の詳細分析については、英国の縦断的調査研究の拠点的存在であるCohort and Longitudinal Studies Enhancement Resources (CLOSER)の協力を得、セミナー参加などによって、英国の4大パネル調査の内容・方法、その調査データを活用したこれまでの分析・成果について、新たな情報を得た。 また、縦断的視点、ライフコースという研究視点に立つ、国際協力と学際的な研究分野の協力の発展を目的として、英国のオックスフォード大学等が中心となって設立した、国際共同研究機関、Society for Longitudinal and Lifecourse Studies(SLLS)に加入した。幅広い国と幅広い研究分野の研究者によって組織される、国際的共同研究作業の一環として、英国及び日本の「若者の学校から仕事への移行」に関する研究を位置づけなおし、これまでの研究成果の再検討、吟味を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、「学校から仕事への移行」研究は、縦断的研究分野における重要なテーマとして位置づけられながらも、他の移行プロセス、生活分野とは切り離されて研究が進められてきたきらいがある。しかし、国際的には、仕事への移行を、幅広い生活分野や他の移行プロセスとの関連において、構造的に捉え直す必要が強く提起されている。近年、劇的な経済構造や労働の変化は、若者の仕事への移行を大きく変容させるばかりでなく、広く若者の他の生活スタイルや文化、意識をも大きく変容させつつある。若者の成長をライフコースという広い視点で見た場合、仕事への移行プロセスは、教育の長期化、実家を離れる時期と意味、カップルとの同棲や結婚、家族形成と子育て等、若者の他の様々な分野と複雑に絡み合い、各移行プロセスが相互に影響を与え合う構造の中にある。 この点、Society for Longitudinal and Lifecourse Studies(SLLS)など、縦断的調査という方法を軸とする研究分野では、国際的比較と研究分野を超えた学際的な研究の必要が提起され、そのような枠組みでの研究を加速、発展させている。SLLSは、2023年も10月に、“Life Courses in Times of Uncertainty”をテーマにした、国際学会を予定している。本研究も、この国際共同研究に参加をし、日英の若者の仕事への移行研究を、ライフコースという視点から、幅広い研究分野の成果を通して再吟して、また国際間の比較を通じて洗い直し、これまでの課題や研究方法の再検討を進める。 具体的には、英国の5つの縦断的なコーホート調査を使って、①異なる世代間の若者の仕事への移行プロセスの変容、②労働以外の若者のライフスタイルと労働への移行プロセスの相互作用、影響に関して、研究を進めることによって、国際的共同研究の一助となることを目指す。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、当初予定していた、英国の教育継続カレッジを直接訪問し、参与観察、若者へのインタビュー調査ができなかったため、旅費等の全額は執行をせず(本研究の1年目、2年目の渡英が実行できず、その未使用分を次年度に繰り越し、また本年度(3年目)も、2回予定のところ1回の渡英にとどまった)、次年度の渡英による実地調査の実施に回すため。
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Research Products
(1 results)