2023 Fiscal Year Research-status Report
PIAACの調査結果を活用した、日本におけるスキルと仕事と教育のミスマッチの検証
Project/Area Number |
20K02623
|
Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
廣田 英樹 国立教育政策研究所, 生涯学習政策研究部, 特任総括研究官 (80402650)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 由紀 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (30334262)
白川 優治 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 准教授 (50434254)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | PIAAC / 教育と仕事 / 教育とスキル / 男女の賃金格差 / 長時間労働 / 項目反応理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度においては、令和4年度に実施したインターネットのモニター調査の結果を分析し公表することが活動の中心となった。具体的には、9月に開催された日本教育社会学会で、廣田は「日本の男女のスキル使用の格差についての分析」と題する発表を行い、研究分担者の本田も「仕事における大学教育の『役立ち度』とスキル使用が収入に及ぼす影響-ジェンダー差に注目して-」と題する発表を行った。これらの発表の元となったモニター調査は、「日本の典型的なホワイトカラーサラリーマン」の仕事と生活の実態を把握するために大卒正社員を対象として実施したものである。前者の発表では、①多くの人は生活に必要な収入を得るために残業に従事していること、②配偶者の有無、とりわけ子供の有無によって、男性は残業時間が増える一方で、女性の残業時間は増加せず家事時間が増加する傾向があり、いわゆる「男性稼ぎ主モデル」が現在でも強固に残っていることなどを明らかにした。また後者の発表では、男性と女性とで、大学教育の「役立ち度」と仕事で使用するスキルの種類に違いがあり、男性は大学教育の役立ち度に関する評価が高く、スキルに関しても収入との相関が大きいものを多く使用する傾向がある一方で、女性はそうではない傾向があることを明らかにした。またその後も廣田は、国立教育政策研究所の紀要第153集に「大学卒業者の認知スキルの国際比較」と題する論文を作成して投稿したが不採択となった。投稿した論文の内容は、リテラシーやニュメラシーなどの認知スキルに関して日本の大学卒業者は参加国中で最高レベルにある一方、学ぶことへの積極的な態度に関しては逆に参加国中で最低レベルにあることを明らかにした上で、その原因を考察したものであるが、内容を更に改善した上で、令和6年5月に開催される日本高等教育学会の年次大会で発表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度実施したモニター調査の結果について分析を行い、それを発表するという目標は一応達成することができた。しかしその一方で、モニター調査の結果の分析方法について疑問が生じるに至った。具体的にはスキル使用をどのように数値化するかという問題である。OECDによるPIAACの公開データにも、スキル使用に関して項目反応理論に基づいて算出されたスコアが収載されているが、この処理については項目反応理論の基本的な原理に照らして重大な瑕疵がある疑いがある。具体的な問題点は、①仕事におけるスキルの使用は、学力のように一直線上にその高低・大小を位置付けることは困難であること、②仕事におけるスキルの使用は被験者集団全体で正規分布していないにもかかわらずベイズ推計法を用いて推計していること、の2点である。研究成果全体の取りまとめを行う上でこの問題について究明することは必須であるので、令和6年度はまずこの問題について決着を付け、その上で研究成果全体の取りまとめを行いたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度実施したモニター調査の結果について分析を行い、それを発表するという目標は一応達成することができた。しかしその一方で、モニター調査の結果の分析方法について疑問が生じるに至った。具体的には、OECDによるPIAACの公開データには、背景調査におけるスキル使用の設問への回答から、項目反応理論に基づいて算出されたスコアが収載されているが、この処理については項目反応理論の基本的な原理に照らして重大な瑕疵がある可能性に気付くに至った。モニター調査でもPIAACのスキル使用と同様の設問を用いているので、令和6年度中にこの問題について究明して、研究成果全体の取りまとめを行いたい。
|
Causes of Carryover |
研究を進める中で、スキル使用の数値化の方法について疑問が生じたことが次年度に繰り越しを行うこととした主な理由である。OECDによるPIAACの公開データには、背景調査におけるスキル使用の設問への回答から、項目反応理論に基づいて算出されたスコアが収載されているが、この処理については項目反応理論の基本的な原理に照らして重大な瑕疵がある可能性がある。具体的には、①スキル使用は学力のように単純にその量を大小・高低で数値化することができるのか、②ベイズ推計法を用いる前提である、スキル使用の正規分布は満たされているのかという2点である。令和5年度はコロナ禍の余波の影響もあり、研究者間でこの問題について十分な意見交換を行うことができなかったが、令和6年度はまずこの問題を究明した上で、最終的な成果報告書を取りまとめる。繰り越した研究費は専ら公表のための印刷費に使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)