2021 Fiscal Year Research-status Report
実施運営の質の多様性と発現する保育者の専門性―幼稚園における2歳児の保育を題材に
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20K02629
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
藤本 松香 (古賀松香) 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70412418)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 実施運営の質 / 構造の質 / 2歳児 / 幼稚園 / 子育て支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現在多様に展開する幼稚園の2歳児の保育における実施運営の質と、その保育プロセスで発揮されている保育者の専門性について検討することを目的としている。今年度は、多様な実施形態の広がりにつながっている保育の質の制度的枠組み(構造の質)に見られる課題を整理・検討した。特に、保育内容については、未就園の幼児を預かる一般預かり事業「一般型」では、保育所保育指針に準じるとされているが、家庭教育との接続及び3歳以上の幼稚園における教育との接続や、「全体的な計画」の中の位置づけ等、どのように円滑な接続を図るのかといったことは、保育所保育指針に内容記載がない。しかし実際には、同じ園で通園タイプの異なるクラスを複数運営しているケースも多く、そうした場合、3歳児保育との接続は一層複雑になるはずである。検討の結果、①保育内容と計画、②子育て支援の計画と実施、③①・②の内容に関わる研修や自己評価については、各園における実施運営面に任されている部分が大きいと解釈された。 また、Z地域における園児募集関連資料を収集し分析を行った。これまでの研究において、幼稚園の2歳児の保育には週5日以上通園する「通園型」と週4日以下の通園である「特別型」に分けて検討されているが、「特別型」の親子通園タイプにおいては、親子参加型イベントとも言える内容で構成されているものが散見され、保育内容の構成原理が異なるタイプが混在していると捉えられた。このことは、2歳児の保育を担当する保育者が抱える課題感の差を生み出し、必要とされる実施運営面での工夫や研修内容が大きく異なる現状につながっていると考えられる。実施時間、日数、通園タイプの選択性など、自由度の高い制度設計は、ニーズに応じるセミオーダーメイドな工夫である一方で、2歳児の保育及び子育て支援の質保障と向上に関わる研修体制や内容の体系化を検討する必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初、通園型と特別型それぞれの課題に関するアンケート調査を実施する予定であったが、保育の実施体制や保育内容に差が大きく、アンケート項目の構成において困難が多かった。また、新型コロナウイルス感染症の拡大により、学級閉鎖や休園が相次ぐ等対応に追われる現場への調査依頼も困難であった。可能な範囲でインターネット会議システムを活用する等して聞き取り調査を行っているが、十分ではなく、引き続き範囲を広げながら調査を行っていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、通園日数によって通園型/特別型と分類する方法を取ってきたが、今年度の研究成果から、保育内容の構成原理が実践における課題の差を生み出していることが示唆された。そこで、日常的な遊びと生活を基盤として子どもの発達を助長するものか、散発的な活動体験の共有により子育ての支援を行うものかによって、保育者の課題感の差がどのように生じるのか、検討していく。また、新型コロナウイルスの感染状況によっては、観察研究も視野に入れ、具体的な実践に見られる課題について検討を行う。
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Causes of Carryover |
聞き取り調査の実施時間によって、テープ起こしの委託費が異なるので、差額が生じた。次年度引き続き調査を行うので、テープ起こし委託費に使用する予定である。
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