2020 Fiscal Year Research-status Report
核実験が現代の子どもに与える影響:カザフスタン・セミパラチンスクを事例として
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20K02650
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平林 今日子 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (00634932)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 健一 滋賀大学, データサイエンス教育研究センター, 教授 (30284219)
川野 徳幸 広島大学, 平和センター, 教授 (30304463)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カザフスタン / セミパラチンスク / 核実験 / 子ども / 被ばく / 放射線 / 核被害 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はまず、カザフスタンの核実験被害援護措置について執筆し、『環境と公害』創刊50周年記念「核汚染被害をめぐる国際制度比較」特集への投稿を行い採録された。カザフスタンの援護措置では「補償金の一括支払い」「年金と給与の加給」「有休と産休の追加措置」を主な特徴としており、一時的な経済援助にとどまらず、生涯にわたる被災者援護を目指している。核実験被災者の子孫、いわゆる被ばく2世、3世への援護措置について法律で規定していることも特筆すべき点であり、本研究の対象者である「現代の子ども」もその対象となる場合がある。しかしながら、それらの補償が十分であるかどうかは議論の余地があり、運用に際しての問題点も今後検証していく必要がある。 本論文をもとに、「核実験被害援護措置の掘り起こしと国際比較研究」公開研究会でも報告を行い、カザフスタンの援護措置について他国との比較を交えながら議論した。 また、日本平和学会関西地区研究会では「カザフスタン・セミパラチンスク核実験場周辺地域の子どもたち」とのタイトルにて発表を行い、セミパラチンスク核実験被害の概要から、現代の子どもが受けている被害の一端に至るまで、これまでの研究成果を網羅的に報告した。 新型コロナ感染症の影響により2020年度はカザフスタン・セミパラチンスク地区での現地調査を実施することができなかった。当初の予定では、セミパラチンスク核実験場周辺に居住する子どもとその家族、5組程度(疾患・障がいのある子どもとその家族3組、それ以外の子どもとその家族2組)へのインタビューの実施を計画していたが、実現はかなわなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017-2019年に実施した基盤研究(C)「セミパラチンスク核実験場周辺に居住する子どもの放射線被ばく被害に関する研究」をはじめとするこれまでの研究実績によって、カザフスタン・セミパラチンスクの現地共同研究者(カザフ放射線医学環境研究所)との協力関係は盤石であり、今年度も現地調査実施に関する打ち合わせから開始した。2019年度に引き続き、障がい・疾患のある子どもとその保護者へのインタビューを実施すると同時に、障害や疾患をもたない、いわゆる健常児へのインタビューを新たに開始したい旨依頼し了承を得た。 しかしながら、新型コロナ感染症の影響により、2020年度はセミパラチンスク地区での現地調査を実施することができなかった。当初の予定では、セミパラチンスク核実験場周辺に居住する子どもとその家族・5組程度(疾患・障がいのある子どもとその家族3組、それ以外の子どもとその家族2組)へのインタビューの実施を計画していたが、実現はかなわなかった。 今年度は現地調査の実施を断念する代わりに、これまでの調査結果を研究成果として発表し(具体的内容は研究実績の概要に記載)、今後の研究推進の方策について共同研究者及び研究協力者と(主にオンラインにて)打ち合わせを実施したり、指導・助言をいただいたりすることに注力した。現地調査の未実施以外は、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、カザフスタン・セミパラチンスク地区の子どもとその保護者に対するインタビューを主な調査手法としており、現地調査なしに研究を推進することは困難である。オンラインでのインタビュー等も検討したが、現地の通信環境や、対象者が子どもであることなどを考慮すると得られる情報が大幅に限定されること、現地共同研究者自身にも移動や人との接触に行動制限があることを鑑み断念した。2021年度中に海外渡航が許可されることを願うばかりである。 2021年度も今年度に引き続き、まずはこれまでの調査の蓄積から得られる成果発表を精力的に行っていく。昨年までに収集した20組のインタビュー回答をテキスト解析し、そこから得られる結果について誌上発表を行う予定である。また、別の研究で得られた、セミパラチンスク核実験の直接の被災者の証言との比較も実施したい。 メールやオンラインミーティングを用いた研究打ち合わせを最大限活用し、より良い研究成果が出せるよう議論を重ねると同時に、現地調査が行えない場合の代替策についても、改めて検討していきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響により、カザフスタン・セミパラチンスクでの現地調査を実施できなかったため。次年度にカザフスタンへの渡航が可能となれば、年に2回の現地調査を実施する、あるいは1回の調査日程を延長する等して2年分に匹敵する調査を実施し、使用したいと考えている。
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Research Products
(4 results)