2020 Fiscal Year Research-status Report
多文化共生保育における音楽実践の理論構築とプログラムの開発
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20K02659
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
山原 麻紀子 東洋大学, ライフデザイン学部, 准教授 (10529952)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 音楽 / 保育 / 多文化共生 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、保育所や幼稚園の現場と協働し、多文化共生保育を促進する音楽活動の理論基盤を構築し、音楽実践プログラムを開発することである。 近年、多文化共生保育の重要性が指摘され、その理念・内容・方法の検討は急務の課題となっているにも関わらず、支援策は限定的であり、保育プログラムの開発には未だ至っていないのが現状である。幼児期は、多文化共生の基盤が形作られる重要な時期であるが、多様な文化的背景や外国にルーツを持つ子どもに対して、言語面での支援事例は多くみられる一方で、音楽面での研究は非常に限定されている。音楽はもともと文化の多様性を学んだり、多文化理解を促進する要素が多く含まれる。本研究では、音楽が有する「普遍性」「文化性」「協働性」という特性に着目し、多文化に属する子どもたちを対象として、互いの文化的多様性を認め合いながら音楽表現を楽しみ、かつ音楽的な発達を促すプログラムを開発することを目指す。 本研究は大きく、①文献調査による多文化共生保育と音楽実践の基礎的研究と②質問紙調査およびフィールドワーク(観察)による現状把握と課題解明を踏まえて、③音楽実践プログラムの提案、さらに④プログラムの実践と省察とで構成される。初年度は、上記の①の実施を中心に行い、我が国における多文化共生保育・教育の歴史的背景をまとめるとともに、諸外国の中でも早くから移民や難民を受け入れ、共生社会を目指してきた先進国であるドイツにおける保育・教育分野での多文化共生の理念と実践事例に着目して考察を行なった。具体的にはドイツの中でも特に移民の背景を持つ住民の割合が高いヘッセン州の「教育要領」における多文化共生理念の位置付けと音楽活動との関連性についてまとめ、現地の保育者や音楽関係者にオンラインインタビューとアンケート調査を実施し、その特徴や傾向について考察を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の研究計画では、初年度である2020年度に上記の①および②を実施予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、保育園や幼稚園等の休園や感染症対策のための特別な形態での保育が実施されるなどの措置が取られた。そのため当初予定していた大規模な質問紙調査の実施を見送り、園でのフィールドワーク(観察)のスケジュールについても変更せざるを得ない状況が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に予定していた研究計画の②質問紙調査およびフィールドワーク(観察)による現状把握と課題解明については、2021年度の実施を目指す。ただしコロナ感染症の状況によっては、研究方法の変更を検討する必要があると考えている。今回、フィールドワークは断念した一方で、オンラインを活用したインタビューを実施できた。具体的にはドイツの保育者や音楽教育関係者を対象としたインタビューで得られた知見をもとに考察を深めることができたため、次年度も継続してオンラインを活用した調査を行っていく。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では初年度(2020年度)に幼稚園・保育所の職員を対象とした大規模な質問紙調査と、フィールドワークの実施を予定していた。しかし新型コロナウイルス感染症の影響により、園の休園や感染症対策のための運用が継続しているため、全ての予定を次年度以降に見送り、スケジュールの再調整が必要な状況となった。初年度は文献調査を中心に研究を進めた。 次年度(2021年度)は、社会状況をみながら可能な形で初年度に予定していた幼稚園・保育所の職員を対象とした大規模質問紙調査とフィールドワークを実施する。そのための調査費用及び記録のための機器購入費用を計上した。
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