2020 Fiscal Year Research-status Report
対人関係の苦手な学生が保育専門職に就くための修学支援プログラムに関する基礎的研究
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20K02663
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Research Institution | Kansai University of Social Welfare |
Principal Investigator |
服部 伸一 関西福祉大学, 教育学部, 教授 (20299142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
半田 結 兵庫大学短期大学部, 保育科, 教授 (10595268)
井上 寿美 大阪大谷大学, 教育学部, 教授 (40412126)
廣 陽子 関西福祉大学, 教育学部, 准教授 (90614868)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 対人関係 / 保育学生 / 保育実習 / 修学支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、看護・福祉などの対人援助職の養成において、合理的配慮を要するレベルには至らないが、発達障害に似通った特質がみられ、対人関係において課題のある学生に対する指導の困難さが指摘されるようになってきた。研究Ⅰとして、対人援助職における先行事例を中心として、特別な配慮を必要とする実習生の困難感や支援に関する13件の文献の検討を行い、問題点の整理を行った。先行研究の分析からは、対象となる学生のアセスメントと配慮のためのシステムづくり、学生相談室との連携による心理的支援、入学前から卒業後までを見通した総合的かつ継続的な支援のあり方などが課題となっていた。実習においては、実習先担当者と実習指導教員、学生との三者による密接な情報共有の必要性が指摘された。また、成績評価(単位認定)の問題も課題とされていた。 筆者らがこれまでに行った実習園・保育士養成校へのインタビュー調査の結果から、免許・資格の取得と直接関わり、かつ、実習指導上最も指導困難な学生、つまり、発達障害に似通った特質が見られる保育実習生の姿を把握することを試みた。その結果、対象となる学生において、11の課題・特徴が抽出され、①学習面に困難がある、②人との関わりに困難があるという2つの困難があることが明らかとなった。 【出所】 ①服部伸一・井上寿美・半田 結・廣 陽子(2021).特別な配慮を必要とする実習生に関する研究動向 関西福祉大学研究紀要第24巻、61-86に掲載 ②廣 陽子・井上寿美・服部伸一・半田 結(2021).気になる保育実習生の実態-養成校・実習園へのインタビューを通して- 関西福祉大学研究紀要第24巻、21-27に掲載
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」でも述べたように、研究の手始めとして、看護・福祉などの対人援助職の養成を対象に発達障害に似通った特質がみられ、対人関係において課題のある学生に対する指導の困難さに関する文献検討を行った(研究Ⅰ)。また、筆者らがこれまでに行った保育士養成校・実習園へのインタビュー調査の結果を再検討し、実習指導上最も指導困難な学生、つまり、発達障害に似通った特質が見られる保育実習生の姿を明確にする作業を試みた。 また、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、当初の予定通りには先行事例となる養成校へのインタビュー調査が実施することができなかった。協力に応じてくれた1校について、オンラインにより聞き取り調査を行った。その結果、どのような経緯でもって問題となる学生が見出され、どのような時期に、どのような問題が発生するのかについて、看護領域の実態に即した情報が得られた。また、ASD(自閉症スペクトラム)、ADHD(注意欠陥・多動症)、LD(学習障害)傾向のある学生に対する支援の方向性を確認することができた。 2020年度は、新型ウイルスの感染拡大により、研究に関わる人的交流が困難な状況となった。したがって、当初予定していた2021年度の日本保育学会での自主シンポジウムの開催を見合わせた。今後、全国の保育士養成校への悉皆調査を進め、特別な配慮を必要とする学生の実態を把握するとともに、保育の特性や保育士の専門性に照らして、どのような配慮や支援が可能であるのかを検討していく。現在、全国保育士養成協議会に加盟する大学・短期大学・専門学校に対する調査(アンケート、インタビュー)に関して、所属先の研究倫理審査委員会に対して、倫理審査を申請中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、合理的配慮を要するレベルには至らないが、発達障害に似通った特質が みられ、対人関係において課題のある学生群に対する保育者養成のあり方を構造化し、早期スクリーニングツール及び修学支援プログラム開発のための基礎資料を得ることである。2021年5月現在、研究代表者の所属先の研究倫理審査を受審中である。審査結果を踏まえて研究計画の修正を行う。計画では、2021年度は研究Ⅱ(アンケート調査)、2022年度に研究Ⅲ(インタビュー調査)を実施する予定である。ただし、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を鑑み、実施時期については今後慎重に検討していく。 研究Ⅱでは、2021年度中をめどに、全国保育士養成協議会に加盟する大学・短期大学・専門学校(535校)に対し、郵送法によるアンケート調査を実施する。指導に困難さのある学生の特性、指導困難さの内容、指導困難さが生じた場合の養成校としての対応、その後あるいは現在の状況(留年、卒業、退学など)、自由記述欄などを加えて構成する。 資料の分析については、質問項目ごとの単純集計並びに養成校の属性によるクロス集計を中心に行う。自由記述においては、テキストマイニングの手法を用いて、対人関係に配慮を要する実習生の全体像と特徴を抽出する。 研究Ⅲでは、研究Ⅱにおいて、調査用紙にインタビュー調査への協力を求め、承諾のあった養成校教員に対してインタビュー調査を実施する予定である。調査期間は2022年度中とする。調査者2名が調査協力者の勤務校へ赴き、半構造化インタビューを行う。インタビューはICレコーダーに録音し、後に逐語録を作成する。資料の分析については、実習生の指導に関わるテキストを切片化してセグメントを切り出し、それぞれのセグメントにコードを付し、カテゴリー化を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、当初予定していた発達障害に似通った特性を持つ学生への支援に関して、先行事例を持つ看護師養成校及び介護福祉士養成校等への聞き取り調査が実施できなかったため。
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Research Products
(2 results)