2021 Fiscal Year Research-status Report
対人関係の苦手な学生が保育専門職に就くための修学支援プログラムに関する基礎的研究
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20K02663
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Research Institution | Kansai University of Social Welfare |
Principal Investigator |
服部 伸一 関西福祉大学, 教育学部, 教授 (20299142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
半田 結 兵庫大学短期大学部, 保育科, 教授 (10595268)
井上 寿美 大阪大谷大学, 教育学部, 教授 (40412126)
廣 陽子 関西福祉大学, 教育学部, 准教授 (90614868)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 対人関係 / 保育学生 / 保育実習 / 修学支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、研究代表者が所属する大学の研究倫理審査を経て、全国保育士養成協議会に加盟する大学・短期大学・専門学校(535校、607養成課程)の保育実習主担当者に対し、郵送法によるアンケート調査を実施した(研究Ⅱ)。162件の返送があり、回収率は26.7%であった。アンケートの内容は、対人関係に困難さがみられ、通常の実習指導では指導が行き届かない実習生(Aさん)の特性、指導困難さの内容、指導困難さが生じた場合の養成校としての対応、その後あるいは現在の状況(留年、卒業、退学、資格取得)等で構成した。 対象となる学生(Aさん)について、指導が行き届かないと感じた点を複数回答で尋ねたところ、学内の実習指導では、「複数の指示に対応できない」(82.7%)、「説明の意図が通じない」(82.7%)、「提出物が出せずに滞る」(80.9%)、「指導案や記録の書き方がわからない」(80.4%)という順であった。また、実習先施設における様子では、「説明の意図が通じない」(81.5%)、「指導案や記録の書き方がわからない」(77.2%)、「連絡・相談・報告がない」(74.1%)、「コミュニケーションがとりづらい」(74.1%)という順になっていた。 94.4%の養成校でAさん本人との面談を実施しており、その内容は「実習での特別な配慮」(56.9%)、「資格取得」(51.6%)、「進路選択」(45.8%)が多くなっていた。Aさんの保護者との面談を実施しているケースも半数近くみられた(46.9%)。学内の教員及び実習先施設との情報共有も積極的に行っていた(88.9%)。 今後、Aさんに関する具体的なエピソードについて、コード化・カテゴリ化を施して問題事象の分類を行うとともに、本人が感じる困難さに視点を当てた考察を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、合理的配慮を要するレベルには至らないが、発達障害に似通った特質が みられ、対人関係において課題のある学生群に対する保育者養成のあり方を構造化し、早期スクリーニングツール及び修学支援プログラム開発のための基礎資料を得ることである。 「研究実績の概要」で述べたように、2021年度は、全国保育士養成協議会に加盟する大学・短期大学・専門学校の保育実習主担当者に対し、郵送法によるアンケート調査を実施した。研究倫理審査に時間を要したことや調査の実施を優先したため、研究成果の公表にまで至っていない。しかし、全国から160件を超える回答があり、この問題に対する関心の高さをうかがえる回収率であった。新型コロナ感染拡大の影響は今後も続くと見込まれるが、対面が難しい場合にはオンラインでのインタビュー調査を実施することも可能である。協力者の内諾も得られていることから、今後の支援に結びつくための貴重なデータを収集したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に実施した全国保育士養成協議会に加盟する大学・短期大学・専門学校へのアンケート調査(研究Ⅱ)の結果を分析・検討する。資料の分析については、質問項目ごとの単純集計並びに養成校の属性によるクロス集計を中心に行う。特に、自由記述で書かれた通常の指導では行き届きにくい実習生(Aさん)のエピソードについては、「質的記述的研究法」を用いて、対人関係に配慮を要する実習生の全体像と特徴を抽出していく。アンケート調査の結果は原著論文としてまとめ、関西福祉大学研究紀要に投稿するとともに、2023年度の日本保育学会で学会発表を行う予定である。 また、2022年度中をめどに、アンケート調査で承諾のあった養成校教員30名に対して、順次インタビュー調査を実施する予定である(研究Ⅲ)。調査者2名が調査協力者に対し、対面もしくはオンラインにて半構造化インタビューを行う。インタビューはICレコーダーに録音し、後に逐語録を作成する。資料の分析については、実習生の指導に関わるテキストを切片化してセグメントを切り出し、それぞれのセグメントにコードを付し、カテゴリー化を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、当初予定していた学会発表が実施できなかったためである。研究打ち合わせもオンライン中心に行った。使用しなかった費用については、「研究Ⅱ」のアンケート結果の概要書の作成や「研究Ⅲ」の研究協力者へのインタビュー調査に充当していく予定である。
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