2020 Fiscal Year Research-status Report
幼児初期の子どもの「身体活動に関わる保育環境尺度」の開発
Project/Area Number |
20K02698
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
松嵜 洋子 千葉大学, 教育学部, 教授 (90331511)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石沢 順子 白百合女子大学, 人間総合学部, 准教授 (40310445)
中村 久美子 (土橋久美子) 白百合女子大学, 人間総合学部, 准教授 (70745760)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 幼児初期 / 身体活動 / 保育環境 / 評価尺度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、幼児初期1、2歳児の保育室や園庭環境、保育方法等を含めた幼児初期の「身体活動に関わる保育環境尺度」を開発して評価を実施し、保育中の子どもの活動の実態と保育者のねらいを検討することである。令和2年度は、(1)文研研究、(2)身体活動を促す環境の質を評価する保育環境スケールの検討、(3)「身体活動に関わる保育環境尺度」試案を作成と試行に取り組んだ。 国内外で開発されて活用されている保育環境に関する評価スケールを分析し、3歳未満児の身体活動を促す環境の質を評価するために必要な項目の要因を検討した。既存のスケールでは、空間や物などの物的環境や子どもや保育者など園内の人的環境など、保育環境を直接構成する指標が多い傾向がみられた。3歳未満児の尺度では、個別の活動が中心であるという特性から、子どもの興味関心や保育者と関わりの指標が多い傾向があった。 検討結果を基に、「物的環境」「人的環境」「人的(外部)」「記録・計画・評価」の計36項目からなる「身体活動に関わる保育環境尺度」試案を作成した。妥当性・信頼性を検証するため、保育者55名を対象として「大変あてはまる」~「まったくあてはまらない」の4件法で幼児初期である3歳未満児クラスにもっともあてはまるものを選択するように求めた。因子分析した結果、「外部の関与と計画評価」「保育者の関わりと子どもの状況」「物的環境と空間・機会」の3因子が見いだされ、互いに相関がみられた。遊具や空間などの「物的環境」や「保育者の関わり」は、「外部の関与や保育計画」の因子と強く関連しており、物的環境・人的環境は、保育計画などの保育のねらいと関連することが見いだされた。 研究成果の一部を論文にまとめており、また学会で発表する予定である。現在も引き続き詳細な分析を行っており、さらに調査結果を踏まえて、質問紙項目の精査を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究メンバーで打ち合わせやメール等のやりとりを随時実施し、研究内容や方法を検討した。新型コロナウイルス感染症の蔓延により、保育現場での観察はできなかったものの、打合せ等はWeb上で実施したため問題なく、調査をスムーズに進めることができた。 【研究1】幼児初期の子ども身体活動や基本動作、保育内容や保育形態等に着目して保育環境に関する国内外の文献を収集・検討した。園の広さや設備など保育室や園庭・園外環境、粗大運動や微細運動の環境、子どもや保育者の人数などの物的な要因、保育者の関わりや仲間との関係など人的な要因、その他の要因の観点から、現在分析を継続して実施している。 【研究2】既存の評価尺度では、物的環境・人的環境に関する項目が多かったが、幼児を対象とした身体活動の評価スケールでは、保護者や専門家などの外部の人的環境や他領域とのつながりを意識した指標が含まれていた。これらの視点からの評価も加えた項目設定が必要であることが示唆されたため、知見を生かした試案を作成し、実施した。3歳未満児クラス担任だけでなく、3歳以上児クラス担任や主任等からもほぼすべての項目で回答が得られた。「回答しづらい」「わかりにくい」という意見はなかったことから、評価項目の記述や選定は適切であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、2年度の研究結果をもとに、以下のように研究を進める。 (1)2年度に実施した調査研究の分析および、研究成果の公表を行う。【研究1】文献調査、【研究2】保育環境尺度の改訂、【研究3】幼児初期の「身体活動に関わる保育環境尺度」の信頼性・妥当性の検証を進めて、学会等で発表する。また成果を論文等にまとめる。 (2)【研究1】文献調査をさらに進め、詳細に分析する。 (3)【研究2】引き続き、保育環境尺度の項目の精緻化を行う。2年度の試行調査の分析結果をもとに、より幼児の実態や保育施設の現状、問題点が明らかになるように等を行って改訂する予定である。2年度に実施できなかった保育観察や、保育方法・保育環境構成の意識や配慮などについても調査を実施する。 (4)【研究3】【研究2】により改訂した「身体活動に関わる保育環境尺度」の調査をさらに多くの園で実施し、妥当性・信頼性の検証を行う。尺度の信頼性は、①安定性、②内的整合性により確認する。妥当性は、①内容妥当性、②基準関連妥当性、③構成概念妥当性により確認する。これらの過程を経て信頼性・妥当性が確保された尺度とした上で、令和3年度調査では、保育環境・ 指導計画との関連、園による差や、子どもの個人差と関連する要因を明らかにするための準備として、実地調査を実施する。
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Causes of Carryover |
令和3年度に調査を実施するための経費や、調査協力施設への調査結果を説明に伴う旅費、物品費、および、学会等での研究発表するための旅費・参加費等に充当するため。
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