2021 Fiscal Year Research-status Report
The current state of mental health of children who attend Japanese schools abroad
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20K02709
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Research Institution | Nippon Sport Science University |
Principal Investigator |
鈴川 一宏 日本体育大学, 体育学部, 教授 (10307994)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本人学校 / 子ども / ストレス / POMS / TMD得点 / 生活習慣 / 睡眠習慣 / 身体活動量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本人学校の子どものストレスの実態からメンタルヘルスに関する問題を抽出し、身体活動量の低下がもたらす体力の低下とストレスの様子、ストレスを抱えた子どもの実態について明らかにすることである。令和3年度は東南アジアに位置する日本人学校の中学生64名を対象に調査を行った。なお、ストレス評価にPOMS短縮版およびTMD得点を用いた。また、生活習慣に関してはMicrosoft Formsによるwebアンケートを行った。その結果、以下のことが明らかとなった。 ①TMD得点を平均以下群・以上群に分類し検討を行った。その結果、平均以上群は「ストレスをよく感じる」、以下群は「ストレスをあまり感じない・全く感じない」と回答した割合が多く、精神的ストレスと自覚ストレスとの間に有意な関連が認められた。さらに、平均以下群の就寝時刻は以上群に比べ有意に早く、アテネ不眠尺度についても顕著に低値を示したことから、TMD得点平均以下群の睡眠習慣は平均以上群に比して良好であった。 ②身体活動量と生活習慣、睡眠習慣、精神的ストレスとの間に有意な関連は認められなかったが、TMD得点平均以下群のPOMS(V)活力得点は顕著に高値を示した。また、「ストレスを解消できている」子どもの睡眠習慣、精神的ストレスは「ストレスが解消できていない」子どもに比べ顕著に良好であった。しかし、滞在歴平均以上群のPOMS(A-H)怒り得点は、平均以下群に比して顕著に高値を示した。 本研究の結果から日本人学校に通う子どものメンタルヘルスには生活習慣が関与しており、自覚ストレスと精神的ストレスに関連があることが認められた。また、日本人学校に通う子どもたちは身体活動量が低く、特にストレスをうまく解消できていない子どもについては精神的ストレスが高く、身体活動量が低値を示す傾向にあることから、ストレスを発散する方法を検討すべきである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究計画2年目であった2021年度の調査では、東南アジアに位置する日本人学校の小中学生を対象として2つの調査を実施することとしていた。まず、調査1は生活習慣や身体活動量、そして健康状況に関する質問紙調査、行動体力(新体力テスト)の測定、ストレスに関する唾液アミラーゼ濃度の測定、そして調査2では校長と養護教諭にメンタルヘルスケアに関するインタビュー調査を計画していたが、2020年度と同様に予定通り実施することができず、現在までの研究における進捗状況が遅れている。その理由について以下に説明する。 ①2019年に発見された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2020年になると世界的感染拡大(パンデミック)となった。そのため、本研究課題がスタートした2020年4月には世界でロックダウンや外出禁止令が出されていた。そして、2021年度についても調査のための渡航が出来ない状況であった。 ②研究遂行のため日本人学校に赴くことができなくなったため、行動体力に関する測定、ストレスに関する測定について実施できなかった。また、日本人学校では2021年度についてもオンライン授業が継続されるような状況であった。したがって、調査1の生活習慣と身体活動に関するアンケート調査はインターネットを活用してのweb調査に変更した。また、質問項目についても、当初の計画では紙媒体でメンタルヘルスに関わる多くの質問項目を挙げていたが、インターネットによるweb調査としたため、質問項目をできる限り少なくせざるを得なくなった。さらには、web調査としたため対象者も中学生のみとした。 ③現地に赴くことができなくなったことから、調査2として計画していた校長および養護教諭へのメンタルヘルスに関するインタビュー調査が実施できなかった。 以上の理由により、2021年度についても計画していた調査より大幅な遅れとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、本研究2年目は研究計画を十分に遂行することができなかった。また、2022年5月現在においても感染拡大の収束は見えていないが、海外渡航制限緩和の兆しが見え始めた。そのようなことから、今後の研究における推進方策としては、渡航許可が降りた段階で実際に日本人学校に赴くようにする。しかしながら、渡航が困難な場合には、アンケートの郵送またはインターネットによるweb調査を実施する。具体的には以下の通りである。 ①2020年度および2021年度の調査結果からメンタルヘルスに関わる因子を抽出し、2022年度については、生活習慣と身体活動に関する質問項目を精査する。 ②海外子女教育振興財団の協力を得ながら、複数の日本人学校についても調査協力の依頼をする。また、海外渡航の制限が緩和された際には計画通り現地にて測定を実施する。一方、国内での学校調査は実施可能になりつつあることから、当初の計画より調査校を増やし、特に離島など本土と異なった環境にある学校の子どもについても調査を実施する。 ③2020年度および2021年度に行った調査結果を学校長および養護教諭に返却し、学校保健・健康教育で活用することによってメンタルヘルスケアの実践を行っていく。 以上のように、現在、新型コロナウイルス感染拡大によって海外渡航が制限されているため、応募当初の予定を変更し、2022年度についても2021年度と同様に、アンケート調査を中心に日本人学校に通う子どものメンタルヘルスケアに関する研究を行っていく。しかしながら、渡航が許可された場合には、応募当初の調査を行うこととする。また、国内の調査校を増やし、東京以外の地域やへき地にある学校についても調査を行う。なお、昨年度調査を行った日本人学校については、メンタルヘルスケアの実践についても行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
理由:本研究では在外日本人学校で子どもを対象に調査をする予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大によって、現地に渡航することが不可能となった。そのため、2021年に経費として申請していた旅費は未使用となった。また、現地での測定調査を行わなかったことから、消耗品等の購入額も少なく、使用した経費は調査結果の印刷のために必要となった消耗品および郵送費のみであった。したがって、2021年度については収入1,500,000円に2021年度の繰越金1,292,006円を足した2,792,006円のうち、支出が168,964円となり、2,623,042円を繰り越しすることとなった。
使用計画:前年度までの繰越金を有効的に活用する。使用計画としては、2022年度においては、海外渡航が緩和されてきたことから日本人学校における現地調査を考え、申請者本人および研究協力者に関する海外旅費、そして消耗品やデータ整理等の謝金として使用する。また、国内での学校調査については継続して行っている調査校の他、へき地や離島など都市部と異なった環境にある学校の子どもについても調査を実施する。したがって、国内旅費および消耗品、測定調補助および資料整理等に対する人件費・謝金に充てる。
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Research Products
(1 results)