2022 Fiscal Year Research-status Report
子どもとの関係構築プロセスの自律的可視化による保育者の意識変容に関する研究
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20K02713
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Research Institution | Ohka Gakuen University |
Principal Investigator |
上村 晶 桜花学園大学, 保育学部, 教授 (60552594)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 保育者 / 関係構築プロセス / 自律的可視化 / 意識変容 / Parallel-TEM / TEA |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、前年度より縦断的に調査している若手保育者2名(保育経験2年目/4年目)へ、2ヶ月に1回の頻度でParallel-TEMを活用した第2段階の自律的可視化と半構造化インタビューを実施した。加えて、第1段階の協働的可視化・第2段階の自律的可視化の2つの取組が終了した後にフォローアップ・インタビューを行い、子どもとわかり合おうとする意識がどのように変容したかを尋ね、TEM(複線径路等至性モデリング)で分析した。 まず、関係構築プロセスの共通的特徴として、行事多忙感・職員連携の難しさ・他児との同時対応の難しさなど、保育者を取り巻く外的環境は関係構築を阻害しやすいことが明らかになった。その反面、年度当初には視点児をわからないからこそわかろうとする意識が作用すること、視点児からの発話や近接など具体的な子ども発信の姿を契機にわかり合えた実感を抱く傾向があること、家庭からの情報や他保育者との比較を踏まえて視点児との関係構築の確度の高さを補強する傾向があることなどが、関係構築を促進する要因として導き出された。 また、第2段階の自律的可視化は、①細かい事実を自分で書き留めることで関係性を追認しやすく、子ども理解の深化につながること、②実際にプロセスを自分で描くことで、子どもの見方の枠組みや関係構築の特徴などを可視的に分析できること、③本取組で得られた新しい視点は他児との関係構築にも援用可能である一方、自分にゆとりがない場合は他児にまで援用する発想には至らず視点児に閉じた思考に留まること、などが見出された。 さらに、第1・2段階の比較を通じて、①自律的可視化と外部他者との対話はわかり合おうとする意識変容に影響を及ぼすこと、②自律的可視化は自己分析を誘発し、わかり合おうとする志向性の涵養や関係構築の確度の高さに資することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インタビュー調査や分析作業・調査協力者への分析結果開示などは、当初の予定から1年遅くなったものの、予定していた全ての調査を終えることができた。その一方で、新型コロナウィルス感染拡大に伴い、申請当初に想定していた研究成果の公開(国際学会への渡航)が予定通りに進めることができず、やや遅れている。また、調査協力者の休職などから、当初2年間で計画していた縦断的研究が延長したことを踏まえ、2023年度には最終的なデータ統合や総合分析を行う予定である。 なお、2021年度までに収集したデータの一部に関しては、桜花学園大学保育学部研究紀要(2022年11月・2023年3月)や、国内学会(2022年5月・11月、2023年3月・5月)及び国際学会(2022年7月:WEB開催)等で、その成果を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
延長した2023年度が最終年度になることを踏まえ、第1・2段階を通じた保育者の意識変容に関して、全調査協力者のインタビューデータを分析・統合し、保育者が子どもとわかり合おうとする意識変容プロセスを可視化する。同時に、共通する社会的文脈・背景や、分岐点に作用した特徴的な要因を見出していく。また、本成果を学会発表や論文執筆などを通じて、研究成果の公開を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度は、新型コロナウィルス感染拡大及び調査実施の延長に伴い、インタビューが2020年度申請当初の予定通りに進まず滞ってしまったこと、また、国内学会や国際学会の一部が非参集型のWEB開催に変更されたことより渡航等が少なくなったことなどが、次年度使用額が生じた主な理由として挙げられる。 2023年度は、縦断的研究として蓄積されたデータの最終的な統合分析に加え、第1・2段階の縦断的調査が終了した後の意識変容を明らかにすることが本研究の主眼でもあるため、必要に応じてフォローアップ・インタビューを実施しながら、データを多角的・総合的に分析した上で、学会発表や論文投稿などを積極的に進めていく予定である。
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Research Products
(9 results)