2021 Fiscal Year Research-status Report
母親の長期休業を前提としない育児休業改革の展望:乳児期保育の今日的意義もふまえて
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20K02714
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
瓜生 淑子 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (20259469)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 育児休業制度 / 待機児童対策 / 3歳児神話 / 乳児保育の今日的意義 |
Outline of Annual Research Achievements |
取得が母親に偏る日本の育児休業制度の問題点と解決策を明らかにする目的から、現在の育休制度が母親と子どもに与える影響を中心にすえて検討し、前年度に大学紀要において成果を発表してきたが、当該年度はその成果、およびそれまでの科研研究も含めた総まとめとして、共著『女性の生きづらさとジェンダー』の中の第6章「育児休業の光と影」にまとめた。 また、学会発表では、厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査」のビッグ・データを用い、二次分析によって早期保育経験が幼児期のパーソナリティや行動の特性に与える影響について分析した。具体的には、28121人の子どもの3歳半時点での性格・行動特性質問項目21項目への回答結果を用いて、潜在クラス分析によって、対象児を「活発・外向的」「内弁慶」「不活発・内向的」「多動・自己主張」の4つのタイプに分け、各タイプの特徴を、多項ロジスティック回帰分析から検討した。その結果、0歳児保育経験について、「不活発・内向的」タイプではそれが少ないこと、「活発・外向的」「内弁慶」タイプでは多いこと、「多動・自己主張」タイプでは保育歴に特徴は指摘できないことなどを示した。この結果は、幼児期半ばで、活発で意欲的という点で0歳児保育の効果がみられることを示唆した。これらの結果と出生順位や家庭階層の各タイプの特徴を合わせて考察するとき、潜在クラス分析という発達心理学研究ではなじみのない方法についてもその有効性を示唆するものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度もパンデミックの影響で、母親の対面調査や子どもの実験調査が実施できなかった。しかし、厚生労働省の貴重なビッグ・データの解析に取り組むことができ、日本ではこれまで実証的には示されてこなかった保育経験の影響について、データに基づく結果を得ることができた点で大きな成果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
厚生労働省の約3万人のデータ分析は、幼児期中期の3歳半児の分析から論じたものである。そこで指摘できた早期保育経験効果が、幼児期後半になって大半の子どもが就学前施設に在籍するとどうなっていくのか、継時的に分析する必要がある。あわせて、潜在クラス分析という、心理学分野ではあまりなじみのない方法について、分析項目数を減らした場合、同じような結果が得られるのか、あるいは、「共変量」を当初から投入した場合も同様の結果が得られるのかについて再分析を進め、方法上の信頼性を高めていきたい。 また、最終年度となるので、育児休業制度について、労働経済・家族社会学等、他分野の研究者も募った上で、制度改革について具体的な提案ができるよう、年度後半にシンポジウムを開催し、総まとめとする計画である。
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Causes of Carryover |
前年度も一昨年同様、パンデミックの影響で対面による調査・実験研究が行えず、それらに計上していた予算が次年度送りとなった。今年度は感染状況・社会的な感染対策なども変化してきているので、それらを勘案しながら、可能な方法で当初の実証的研究のためのデータ収集を行っていきたい。
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Research Products
(2 results)