2020 Fiscal Year Research-status Report
保育者による虐待的係わりについての実証的検討:実態把握と予防に向けた基礎的研究
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20K02721
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Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen Junior College |
Principal Investigator |
大西 薫 岐阜聖徳学園大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (80616532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 将史 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成・院), 准教授 (20568498)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保育者による虐待 / 不適切な保育 / マルトリートメント |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年に施行された「子ども・子育て新制度」によって、保育の認可制度基準そのものがさらに緩和されることになり、待機児童解消のための受け皿は増えたものの、保育の質が置き去りにされていることも指摘されている。保育士不足や離職率の高さ、定員を超えた「詰め込み保育」は、命令や禁止事項で子どもの主体性や自由を奪うような質の低い保育による死亡事故や事故が多発しており、保育現場において子どもの命を守る取り組みは喫緊の課題であり、そのためには保育環境の改善が必要である。 特に近年では、養護と教育の専門家である保育者が子どもに対して「虐待」を行っているという恥ずべき事態があるとともに、深刻な問題として保育を懸命に行いながら、実は子どもの人権を侵害してしまっているケースも見受けられる。本研究では、保育者による虐待的係わりの実態的把握及び予防対策に向けた基礎資料を得ることを目的としている。 本年度は、保育者による虐待的係わりに関する基礎的データ収集を行うため、①新聞報道・書籍で示された虐待的保育及び背景要因の分類、②主任および保育職歴が10年以上の職員に対して不適切と思われる保育活動に関するアンケート調査を実施した。今後は、保育実習生へのインタビュー調査(実習中に感じられた不適切な保育者の係わりに関するエピソード)、および保育職に就いた卒業生に対するインタビュー調査(同僚保育者による不適切な保育エピソード)を実施し、十分なデータの蓄積を図るとともに、得られたデータの質的分析を行うとともに、質問紙調査に向けた項目を選定していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、保育者による虐待的関わりに関する基礎データの収集の期間であった。新聞報道や書籍で示された虐待的保育及び背景要因の分類に関しては継続して行えている。しかし、保育実習生に対するインタビュー調査は、新型コロナウイルス感染症対策により、保育現場の実習期間縮小、学内における代替実習と変わり、本研究で計画していた実習中に感じた不適切な保育者の関わりに関するアンケート調査が難しい状況になってしまった。 また、新卒保育者へのインタビュー調査は、対面実施は保育者の職務上難しく、本来のインタビュー調査が今年度にあっては困難であった。ただし、調査への協力への快諾は得ているので、社会状況が落ち着けばすぐにでも着手する予定である。 主任・管理職への予備的調査では、不適切な保育に関する具体的な内容が示されていたため、今後は保育経験による違いも検討していくためにも、さらなるデータの蓄積を行い、質問紙調査に向けた項目選定につなげていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
保育者による虐待的な係わりや不適切な保育に関する基礎的データを収集するために、新聞報道や、報告されている保育事故について、その要因を分類し、データを蓄積していく。また、質的データを確保するために、可能な限り保育実習生や保育者を対象としたインタビュー調査を実施し、質問紙調査の項目を選定していく。 令和2年度は新型コロナウイスる感染症によって、卒業生が大学に入校することや、感染症対策によって外部との接触をできるだけ控えるよう職場から通告されていたことなどもあり、現職保育者へのインタビューの実施は困難であった。インタビュー内容が保育活動のネガティブな側面を聞き取ること、オンライン上では表情などが分かりにくく、感情的情報も多く含まれると想定されるため、対面でのインタビューを行えるようになるまで実施を延期することを決断した。しかし、社会状況が改善されず、対面でのインタビューができない状況が続くようであれば、インタビュー方法の変更や修正も検討し、研究が遂行できるようにしていく。
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Causes of Carryover |
令和2年度に計上していた人件費はインタビュー協力者への謝金であり、新型コロナウイルス感染症により実施ができなかったため。また、旅費に関しては海外の学会参加(ヨーロッパ幼児教育学会)を予定していたが、次年度に延期となったため使用していない。次年度使用額が生じている。
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