2021 Fiscal Year Research-status Report
保育者による虐待的係わりについての実証的検討:実態把握と予防に向けた基礎的研究
Project/Area Number |
20K02721
|
Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen Junior College |
Principal Investigator |
大西 薫 岐阜聖徳学園大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (80616532)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 将史 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成・院), 准教授 (20568498)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 不適切保育 / 同僚保育者 / 子どもの人権 / 保育者の専門性 / 第三者的視点 |
Outline of Annual Research Achievements |
保育者による虐待的係わりの実態把握に向け、不適切保育の特徴を第三者である同僚保育者の視点から明らかにするため、同僚保育者が見聞きした不適切な保育事例を自由記述で回答するように求めた調査を行った。得られた保育事例を全国保育士会による行為類型(保育者の「良くない」と考えられるかかわり)と比較した。 その結果、既存の5類型(「①子ども一人ひとりの人格を尊重しない関わり」、「②物事を強要するような関わり・脅迫的な言葉かけ」、「③罰を与える・乱暴な関わり」、「④子ども一人ひとりの育ちや家庭環境への配慮に欠ける関わり」、「⑤差別的な関わり」)に加え、「⑥子どもの働きかけに応じない・無視する・放置する関わり」、「⑦その他」が得られ、保育者自身の資質の問題、専門職としての知識・技能の不足、職員間の連携が機能していない、園の方針の問題や管理職の管理責任放棄といった問題が存在することが示唆された。これらの結果を踏まえ、(1)不適切保育の行為類型における概念の独立性の問題、(2)新たな行為類型と保育者の専門性、(3)第三者的視点から不適切保育をとらえることの有効性について考察を行った。 本研究で得られた保育者の自由記述では、同僚が行っている不適切保育に対して辟易してしまい、離職してしまったケースも見られ、このような実態は新聞報道やルポルタージュでも報告されている内容と同様であり、改善を呼びかけても改善されないケースも見られたことから、厳しい保育環境で勤務する保育者を守る仕組みも必要であろう。保育者の自助努力によって不適切保育の問題を解決するには限界があり、日本の保育システムの構造的問題として取り組むことが必要と考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
保育者による虐待的係わりに関する基礎データの収集を継続して行っているが、新型コロナウイルス感染症により、予定していた保育者養成校卒業生へのインタビュー調査が滞っている状況である。また、保育実習生に対するインタビュー調査においても、学内代替実習を実施している状況であり、保育現場で感じた不適切な保育エピソードを得ることができなかった。令和3年度後半より、少しずつ保育現場において学生の受け入れが可能となったことから、十分なデータの蓄積を目指していく。
|
Strategy for Future Research Activity |
現職保育者への質問紙調査やインタビュー協力依頼は、教員免許状更新講習の場を用いて実施してきたが、今後制度が廃止されることから、今後は、自治体が行う研修制度や、卒業生への協力依頼などもしながら、第三者から捉えた不適切保育の現状を把握をするための質的データの確保をしたい。そこから得られた知見をもとに、保育者による虐待的係わりと背景要因について質問し項目の選定を行っていく。
|
Causes of Carryover |
当初計画していた国際学会発表は新型コロナウイルス感染症のため渡航できなかったことから予算執行していない。また、謝金として予算計上していた現職保育者へのインタビュー、それに伴う謝金を予算として計上していた分は、次年度実施する確約はできており、やや遅れている質的データを社会状況に合わせて確保していきたい。
|
Research Products
(1 results)