2021 Fiscal Year Research-status Report
幼児教育・保育の無償化は沖縄の子育て環境・教育の貧困化対策として機能するか?
Project/Area Number |
20K02722
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Research Institution | Tokyo Future University |
Principal Investigator |
柳生 崇志 東京未来大学, こども心理学部, 准教授 (70381712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 祐一 東京未来大学, こども心理学部, 准教授 (80751221)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 幼児教育・保育の無償化 / 沖縄 / 子育て支援 / 教育の貧困化 / 保育の質向上 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,2019年10月から開始された幼児教育・保育の無償化が,深刻な貧困問題を抱える沖縄の“子育て環境および教育の質的低下”を防ぐための有効な施策として機能しているかどうかを検証すると同時に,関連する子育て・教育支援策の提案と検証を行い,統合的な支援モデルを創生することである。 3年間の研究期間の2年目にあたる2021年度は,初年度に引き続き,基礎的データの収集とモデル検討を主に行なった。具体的には,1) 沖縄地域を対象にした子育て環境および教育の貧困状況の把握,2) 幼児教育・保育の無償化と就園意識・行動の関連調査とモデル検討であった。しかし,計画初年度に続いて今年度も新型コロナウイルス感染拡大の影響により,調査の方法や回数等の計画変更を余儀なくされたため,対象者を限定したインタビューとパイロット調査の実施を行うにとどまった。 これらの調査から,幼稚園教諭・保育士・保育教諭らによる子育て環境および教育の貧困状況についての評価としては,無償化施策の導入による保護者の負担軽減の効果は限定的であること,また計算上は保育にかかる費用合計が低くなった家庭においても無償化対象外の費用負担に注意が向けられることにより,実際の負担減と負担「感」にはギャップが生まれていることなどが指摘された。 さらに,施設長など園の経営を管理する職務にある職員からは,子どもごとに異なる複数パターンの費用計算が煩雑で,その他の保育業務に対して時間的・心理的な圧迫が生じてしまうという問題点も指摘されている。日常保育における制度的な多様性は,行政と家庭にメリットをもたらしているが,制度を維持している保育現場の負担はむしろ増している傾向にあり,このことは同時に保育者が保育の質向上に取り組む機会を減少させることにつながるという危機をまねいていることなどが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究開始当初の計画では,2年目からは幼児教育・保育の質向上のためのアクションリサーチとして,主に保育者を対象とした継続的・臨床的な研修の実施に取り組む予定だったが,コロナ禍においてその実施が制限され,未だ実現に至っていないため「遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,研究期間初年度および2年目に計画していたが未実施の調査(とくにアクションリサーチ)実施を推進し,また当初計画を適宜見直しながら,研究計画全体の進度調整を図る。 インタビューやアンケート調査などは,インターネットを利用した会議システムやアンケート機能を今まで以上に積極的に適正に活用することで必要なデータを集めることができると考えられるが,継続的・臨床的なアクションリサーチや子育て環境の実態調査等はインターネットの活用だけでは不十分である。しかし新型コロナを取り巻く環境に変化がみられてきており,各種行動制限も緩和される傾向にあるので,今後は時機を見て,種々の感染拡大防止対策をとりながら現地での調査活動を再開することにしたい。
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Causes of Carryover |
(理由) 新型コロナウイルス感染拡大の影響により,今年度においても調査対象地域への渡航が制限されたため,旅費の支出がなく,また関連して,調査にかかる謝金やデータ分析補助等に係る人件費の支出もなかったため。 (使用計画) 初年度,今年度に計画していた国内外への調査対象地域における現地調査を可能な限り集中して行うこととし,そのための旅費や謝金,人件費等に主に支出する予定である。また,次年度は全体計画の最終年度であるので,研究成果の発表のための費用も支出する。
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