2020 Fiscal Year Research-status Report
地域からの視座と歴史教育実践の革新的継承に基づいた歴史総合の実践プログラム開発
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20K02723
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
篠塚 明彦 弘前大学, 教育学部, 教授 (50710852)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歴史総合 / 地域史 / 歴史教育実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は2022年度から実施される「歴史総合」について、実践設計の指針となる理論的枠組みを提供するとともに、具体的なプログラムの開発に取り組むことを目的としている。その際、地域からの視点を歴史総合に位置づけることと、戦後歴史教育の実践的蓄積の発展的な継承を図ることを柱に取り組むものである。 本研究の1年目となった2020年度は、歴史総合そのものの検討を中心に進めてきた。歴史総合に関する自身のこれまでの研究を基礎に、科目としての可能性と課題について改めて整理を行い、歴史総合のあり方について、実践に向けての基本的な方向性の確立、理論構築に取り組んだ。その際に、学術会議による「歴史基礎」提唱の時点から、その後の中教審での議論を経て歴史総合の創設に至る過程を視野において、どのような変容が見られたのかの分析を行ってきた。歴史総合についての再検討を進める中で、現在進められている歴史総合の創設を含めた高等学校地理歴史科・公民科改革の背景には日本社会全体の変容や政策動向の変化が関係している可能性も見出されてきた。そのため、日本社会全体の変化や政策動向の変容との関係性(産業界から求められている教育への要望等を含む)についての資料収集を進めるとともに検討を始めた。 また、近現代史研究について資料収集に着手するとともに、近現代史研究の到達点や成果の検討にも取り組んだ。その際、現代史研究については、特に地域史研究の成果と到達点を強く意識して取り組んだ。 なお、2020年度の研究成果の一部は、論文(「地域-日本-世界をつなぐ歴史学習-世界史の中の「民次郎一揆」-」)としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
歴史総合の創設に至る状況を確認していく中で、高校学校地理歴史科・公民科の改革と日本社会の変容や政策動向との関わりが明らかとなってきた点においては、当初の計画を十分に達成できたと考えている。しかしその一方で、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、学会や研究会等が中止・延期となり資料収集を思うように進めることができなかったこと、研究協力者との研究に関する打合せ等を十分に行い得なかったことから、全体としてはやや遅れている。2020年度に十分に取り組むことができなかった部分については、新型コロナウイルス感染症の状況も見極めながら、2021年度以降の研究計画の中で、柔軟に調整を図っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、高校学校地理歴史科・公民科の改革と日本社会の変容や政策動向との関わりについて整理を進めるとともに、引き続き近現代史研究の成果分析に取り組み、歴史総合の内容面での課題克服のための枠組みを構築する。また、歴史教育実践の資料収集(代表的実践家からの聞き取りを含む)とその分析を一部進める。実践の分析に際しては、今求められる「主体的で対話的な深い学び」との共通点と相違点を明らかにし、歴史教育実践の蓄積から歴史総合への継承可能な側面を析出していく。前年度に十分でなかった研究協力者との打合せについては、新型コロナウイルス感染症の状況も見ながらオンラインも活用しつつ会合を進めることで議論を深めていく。 次いで2022年度は、歴史教育実践の分析を完成するとともに、実践プログラム開発に着手していく。実践プログラムの開発にあたっては、研究協力者の協力を仰ぎつつ教材・授業開発を進めていく。その際、それぞれの地域的特質(東京と地方、東北と中国地方)の相違や高校生の実態、さらには中学校の歴史学習との接続の視点を意識して進めていく。 その後最終年度には、実践プログラムの開発を達成する。開発した教材の検証授業を行い、教材の有効性について検証を進めるとともに改善を図る。その際、汎用性と地域特性に着目しつつ分析を進め、汎用性が認められたものについては他の地域で再度検証授業を行い有効性について確認する。 なお、今後の研究推進においては、新型コロナウイルス感染症の状況も見極めつつ、柔軟に調整をはかりながら取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、参加を予定していた学会や研究会等について中止や延期が相継いだこと、研究協力者との研究に関する打合せ等を十分に行い得なかったことから旅費・参加費・謝金の支出が当初予定より大幅に少なくなった。コロナウイルス感染症の状況も見極めながら、遅れている資料収集を早急に進めるとともに、オンラインによる学会・研究会への参加や研究協力者との打合せを円滑に進めることができるように環境を整備していく。
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