2020 Fiscal Year Research-status Report
能の学習が呼び起こす身体感覚が児童の感性に与える影響―歌声と脳賦活に着目して―
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20K02746
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Research Institution | Kamakura Women's University |
Principal Investigator |
田村 にしき 鎌倉女子大学, 児童学部, 准教授 (50613494)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 音楽科教育 / 日本の伝統音楽 / 能 / 謡 / fNIRS |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題の目的は、能楽を小学校で導入する際の、効果的な教授方法を確立することである。筆者はこれまで日本の伝統音楽の指導方法に関する研究を継続してきたが、日本の伝統音楽独自の身体の使い方、発声、息遣いが、児童の歌声や感性に与える影響は未解明である。本研究課題ではこの影響を精緻に検証するため、小学校第4学年児童に1年間、能の学習プログラムと、授業外における能の謡(うたい)の稽古を継続的に実施し、音声学的評価と脳神経学的所見による分析を行う。 第1年度(2020年)は、コロナ禍で、小学校における授業で能の謡をうたうことや、接触をともなう実験を行うことができなかった。限定的に、総合的な学習の時間に、地域に伝わる能や謡の調べ学習を行ったり、地域の講師が児童の質問に答える授業を行った。次年度もコロナ禍の感染状況が悪化すれば、検証授業をオンラインで行うことも検討し、本格的な能の学習プログラムの実践及び教育効果の測定のための実験は、第3年度及び第4年度で行うよう検討した。 第2年度より、fNIRSを用いた謡の聴取時と歌唱時における大脳皮質前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度長変化と、心拍数の変化を検証するため、fNIRS(Spectratech OEG-16H)と、その分析に必要なソフトを購入し、実験方法及び分析方法について検討した。 音声学的評価にかかわる実験についても、コロナ禍で児童の歌声を録音することができないため、過去の児童の歌声の録音データからみられる特徴を検証した。さらに、児童の歌声やfNIRSを使用した解析結果は、プロの能楽師や声楽家が歌った時のデータと比較するため、プロが歌った時の歌の録音やデータの分析、聞き取り調査を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度、予定通り、教育効果の測定に必要なfNIRS(Spectratech OEG-16H)及びその分析に必要なソフトを購入し、実験計画や分析の方法について検討することができた。しかし、コロナ禍において、小学校で能の継続的な授業や教育効果を検証する実験を行うことができない状況となった。来年度も、同じような状態が続けば、歌を歌う授業や実験を行うことができなくなってしまうため、授業を延期したり、オンラインで代替するなどの計画の変更が必要になったため。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度(2021年度)は、小学校第4学年の児童約25名に対して翌年度6月まで、12カ月にわたり能の学習プログラムを実施し、第3年度(2022年度)に、再現性の検証を目的として、1学年下の児童約25名に対して同様のプログラムを実施する予定であった。 しかし、第2年度(2021年度)は、コロナ禍において、集団で歌を歌う授業や実験を行うことに制限がでてきてしまうため、オンラインを利用したり、授業内容を変更したりするなど、できる範囲の授業を行うにとどめる。そして、第3年度(2022年度)に、予定していた能の学習プログラムと教育効果検証のための実験を行い、第4学年度(2023年度)に、再現性の検証を目的として、1学年下の児童に対して同様のプログラムと教育効果検証のための実験を行う。 児童の歌声やfNIRSを使用した解析結果は、プロの能楽師や声楽家が歌った時のデータと比較するため、プロが歌った時の歌の録音やデータの分析、聞き取り調査等は、感染対策を行った上で適宜進めていく。
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