2020 Fiscal Year Research-status Report
国語科における「創造的・論理的思考力」育成のための言語パフォーマンス評価の開発
Project/Area Number |
20K02765
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮本 浩治 岡山大学, 教育学研究科, 准教授 (30583207)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高等学校 / 創造的・論理的思考力の育成 / 言語パフォーマンス / 学習と評価の一体化の開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,高等学校国語科において,「創造的・論理的思考力」を継続的に育成するための学習評価モデルの具体として,言語パフォーマンス評価のあり方を開発することにある。具体的には,本研究では,次の3点についての検討を行うことを目的とした。①「創造的・論理的思考力」の内実とその関連についての具体を明らかにする。②論理論証教育,とりわけ国語か授業における「創造的・論理的思考力」を育成するための学習評価モデルとして,言語パフォーマンスの質に着目し,パフォーマンス評価方法の具体を開発する。③開発した言語パフォーマンス評価方法を実際に施行し,修正していくことによって,高等学校の教育現場で実現可能で,有効なパフォーマンス評価の具体を構築する。 さまざまな報告や答申の中では,「パフォーマンス評価」をはじめとした新しい評価方法が提案され,学習の中での子どもたちの学力形成を意識した取り組みの必要性が提言されているにもかかわらず,高等学校における評価は依然として「ペーパーテスト」を中心とした「知識・技能」の定着,あるいは「習得」を中心とした学力観に根強く依拠している現状をアンケートやインタビューを通じて明らからにした。「点数化できることの方が客観性があり,説明ができる」という点に安心感を持つ教員が多数いることが明確に位置付けられた。 研究としては,言語能力としての「創造的・論理的思考力」がいかに形成されていくのかをメカニズムとして,「読むことの学習」との関係の中で整理した。また,学習者の表現行為としての言語パフォーマンスを促進する発問のあり方や「目当ての立て方」について整理し,「話し合おう」や「考えよう」という抽象的な言葉では行為を誘発することは不可能であり,具体的な場や相手,表現行為を取り上げなければ,学習者の表現行為が促進されないのではないかという仮説を設定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は,主として高等学校の教育現場に身を置く研究協力者との共同研究の色合いが強いものである。しかしながら,新型コロナウィルスの流行拡大,またこれに伴う非常事態宣言等の発出により,高等学校の教育現場での実地での観察や提案的な取り組み自体が難しい状況が存在する。また,言語パフォーマンスの質的向上とその評価のあり方を目指すという点を強調し,実践的な検討を軸とする本研究においては,生徒の協働的な営みや表現行為が限定される現在の状況では,実践的な検討自体が難しい側面がある。 現状の打開こそが目指される必要があるものの,いまできることとして,諸外国の教育実践研究の動向や理論的検討等を行いつつ,教育実践への適用可能性を探っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も,新型コロナウィルスの流行傾向については大きく改善されない状況である。現状のままということであれば,学校現場への参入も難しい状況は変わらないままであることが予想される。 本年度は,昨年度実施したアンケートやインタビューをまとめ,ペーパーを作成することを中心的な作業としたい。また,アンケートやインタビュー,研究協力者との間で立論した仮説を検証するために,ビデオカメラ等を購入し,研究協力者へ貸与することで,仮説検証のための授業を実施してもらい,データを収集していくようにしたい。
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Causes of Carryover |
まず,新型コロナウィルスの流行拡大に伴い,フィールドワークや調査研究のための出張ができなかったことが大きな要因である。次に,人件費等の支出においても,院生等にアルバイトを資料の整理やデータ処理を依頼する予定であったが,研究代表者個人で処理できたために,予定した支出に達しなかった。最後に,新型コロナウィルスの感染状況に変化が見られないことを想定し,研究計画の練り直しを行いながら,研究を遂行していくために,この後,必要となることが予想される物品についても検討を行ったこともあり,当初の予定とは異なる状況になった。 今後,練り直した研究計画をもとにして,物品の最適な購入計画と使用計画,また学校現場への参入が難しい状況下での研究活動の実施に向けた旅費の使用計画の練り直し,経費の割り振りの変更を検討しながら,研究成果の公表に努めていくこととする。
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