2021 Fiscal Year Research-status Report
能動的な姿勢を促す参加体験型音楽鑑賞学習に関する研究 ジュネーヴの教育からの示唆
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20K02796
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
今 由佳里 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (40440838)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HarmoS / PER / ピアジェ / 構成主義 / リトミック / 幼少接続 / フランス語圏スイス / 幼稚園 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ジュネーヴにおける参加体験型の音楽鑑賞授業資料分析と考察を中心に研究を実施した。ジュネーヴ州の音楽教育最大の特徴は、ダルクローズ(Emile Jaques-Dalcroze, 1865-1950)のリトミックを中心とした学校音楽教育と言えるが、心理学者ピアジェ(Jean Piaget,1896-1980)の影響は、ジュネーヴの学校教育全般に長年色濃くもたらされていることはこの地では周知されている。スイスで生まれ、ジュネーヴ大学教授であったピアジェの教育的アプローチの影響は、ジュネーヴ州の学校教育全般に強くもたらされており、ジュネーヴ州公教育課では、初等教育においてピアジェの構成主義に重きを置いた教育アプローチを推奨すると明示している。ジュネーヴで実施されている音楽鑑賞授業は、学習対象について子ども達が体験的・能動的に学びを深めつつ、知識を構成していくピアジェの影響が顕著に認められる事例と言える。この教育法は、子どもたちの音楽鑑賞力の育成に繋がっており、子ども達の「音楽的な耳」を育てることにも貢献している。授業の内容を見ると、音楽に限らず、身体の動きや絵画、グラフィック、写真、演劇、詩、ダンスなど芸術分野の様々な側面からアプローチしていることが認められた。このような試みは、受け身的な鑑賞学習が課題と言われる日本の学校音楽教育にも示唆をもたらすものと言える。 なお本年度の研究成果は、2022年2月15日に風間書房より刊行した拙著『フランス語圏スイスの学校音楽教育』に含まれている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に続き、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響から、スイスでの現地調査を見送らざるを得なかった。そのため今年度は、これまでの研究の成果を体系的に整理して学術図書『フランス語圏スイスの学校音楽教育』としてまとめた。また、海外調査が難しい状況が続いているため、スイスの公立小学校教員の協力を得て、過去に実施されてきたConcert Scolaireの教材集を52冊収集し、選曲や学習内容の傾向についても検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である令和4年度は、延期しているスイスでの調査と学会における研究発表を予定している。新型コロナウィルス感染症の状況を見据えつつ、スイス調査を実施して新たな研究資料を収集していきたい。また、これまでの研究成果を学会において発表し、国内外の研究者と本研究課題に関する検討を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響のため、前年度に引き続き、スイスでの海外調査を実施できなかった。そのため残額が生じることとなったが、2022年度は、延期しているスイス調査を実施して使用していきたい。
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