2022 Fiscal Year Research-status Report
認知系・非認知系コンピテンシーを輻輳的に高める幼小接続カリキュラムの再構築
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20K02797
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
原田 信之 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (20345771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇都宮 明子 島根大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (40611546)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 認知能力・非認知能力 / コンピテンシー / 学力調査 / ビルドゥング学 / 社会情動的スキル |
Outline of Annual Research Achievements |
資質・能力(コンピテンシー)の育成は、ドイツでは幼児教育と初等教育の接続期から低学年教育までの時期を例外期として扱わず、すでに就学前教育から始められている。幼児教育・領域(環境)と親和性の高いドイツの統合教科「事実教授(理・社を中核にした統合教科)」の研究から導き出された認知系・非認知系コンピテンシーは、累積的・継続的に育成するために、体験活動や遊びを通して身に付ける時間認識や空間認識の基礎として、どのような資質・能力を設定し、幼小接続に有効に機能するようにしているのだろうか。この問いに答えを見いだすため、ドイツの2州のビルドゥング計画を取り上げ、低年齢児教育にふさわしい全人的教育を実現しつつ、コンピテンシーを要とするカリキュラムのどこに有効な構造的特色があるのかを明らかにした。 このカリキュラム構造の特色は、ビルドゥング学を基盤にした教授・学習論を基盤にした「三次元構成論」として抽出することができた。これは、認知スキル(認知コンピテンシー)と社会情動スキル(非認知コンピテンシー)の輻輳性・相乗性をもって説明できる連関モデルであり、そのモデルを発展的に応用できるように、その連関性の詳細な描出に努めた。この研究成果は拙著『ドイツの学力調査と授業のクオリティマネジメント』(風間書房、2023年3月)の第2部「認知能力と非認知能力(コンピテンシー)を育成するカリキュラム」(同127-173頁)において公表されている。なお、第1部「ドイツの学力調査と授業のクオリティマネジメント:学力格差を分析・改善するためのフィードバックシステムの解明」では、非認知能力の育成を含めたトータルな学力格差を是正するために、ナショナルとローカルの両次元で二元的に実施するドイツの学力調査を対象に格差是正のフィードバックシステムの解明に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するために、研究計画立案の段階で以下の4つのメルクマールを設定した。①歴史教育学の観点から低年齢期に適した認知系コンピテンシーを解明する。②ドイツ低年齢期教育(5-8歳)で幼小の接続に有効に機能する非認知系コンピテンシーを理論と実践の両面から検討する。③体験学習を通して社会認識の基礎を育成する生活科独自のコンピテンシーを確定する。④体験と認識の調和を実現することのできる、融合型コンピテンシー志向の幼小接続カリキュラムを開発し、具体的な教材例を示す。これら4つのメルクマールからすると、①と②については、2つの州のモデルカリキュラムを取り上げ、カリキュラムの「三次元構成論」として認知系コンピテンシーと非認知系コンピテンシーを特定し、その構造モデルは提示されている。③についても、2つのモデルカリキュラムに基づき、生活科に転用可能な社会認識の基礎を育成するコンピテンシーの抽出は図られているし、そのコンピテンシーの実像の細部にわたる描出もなされている。これらのことから、④の具体的な教材例の提示に取り組むことが求められている。研究期間を1年間延長したことからこの機会を利用し、モデルカリキュラムをもう一つ取り上げ、③と④のメルクマールに関する洞察をさらに深めていくこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画立案の段階で示した本研究遂行のための4つのメルクマールに従い、残された④に関し、認知系コンピテンシーと非認知系コンピテンシーを育成するための具体的な教材例の分析と提示に努めることとする。これに加え、研究期間を1年間延長した機会を積極的に活用するため、③と④のメルクマールに関し、さらに1つのモデルカリキュラムを取り上げることで両コンピテンシーの適切性をさらに高めていくこととする。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症のためドイツへの研究機関等への調査研究が実施できなかったため、予定していた海外出張のために計上していた旅費が使用できなかった。オンライン会議を実施したり、メールで依頼したりして、概ね、必要な資料の収集に努めた。こうして収集した資料等で補いきれない内容について訪問調査を実施するか、研究成果の公表に使用する予定である。
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Research Products
(15 results)