2021 Fiscal Year Research-status Report
作文・推敲につながる文法の知識・技能とその指導法に関する研究
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20K02800
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
松崎 史周 国士舘大学, 文学部, 准教授 (20634380)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中学生の作文 / 作文コーパス / 文法的不具合 / 機能表現 / 昭和戦前期 / 読方教育における文法の扱い / 綴方教育における文法の扱い / 機能的文法指導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(2021年度)は作文コーパスを用いて文法的不具合の調査・分析を進め、文法指導における機能的な指導の調査・分析を行った。 文法的不具合としては、主述の不具合、修飾の不具合の調査・分析を行ったが、いずれも昨年度(2020年度)までに実施した小学生対象の調査・分析と比較・対照して、中学生の主述および修飾の不具合の出現傾向を明らかにした。 機能的な文法指導については、昭和戦前期の読方教育および綴方教育における文法の指導に関して、小学国語読本に関わる指導書や東京高等師範学校附属小学校教員の綴方教育書を対象として文法の扱いを調査し、戦後の機能文法論の前提となった戦前の文法指導の動向を明らかにした。 また、論理的表現力育成につながる語彙の指導として機能表現を取り上げ、学習指導要領の「情報と情報の関係に関する事項」に関わらせた指導の内容と方法を提起した。 成果の発表として、学会発表1件、論文発表5件を行った。主述の不具合については、国士舘大学人文学会誌にて発表し、修飾の不具合については、国士舘大学国文学会誌にて発表した。昭和戦前期の読方教育における文法の扱いについては、早稲田大学大学院教育学研究科紀要にて発表し、昭和戦前期の綴方教育における文法の扱いについては、国語教育史学会学会誌にて発表した。論理的表現力育成につながる語彙の指導については、日本国語教育学会学会誌にて発表している。 本研究における本年度(2021年度)の研究計画は、文法的不具合のうち修飾の不具合、機能表現のうち節連鎖・接続に関する文中機能表現の調査・分析を行うことである。機能表現については節連鎖に関わる機能表現の調査・分析が行えなかったが、文法的不具合と昭和戦前期の機能的文法指導の調査・分析が行えており、十分な成果と評価できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中学生の主述・修飾の不具合の調査・分析と発表、条件表現の調査・分析の発表が行えたたため、研究課題の数としてはおおむね達成できたものの、前年度および本年度の計画の未実施分が残っている。また、最終年度に実施予定の文法指導法の開発に向けた基礎調査として、昭和戦前期の機能的文法指導の調査・分析を行うことができたが、文法指導法の開発までは至っていない。研究資料(作文コーパス)の整理は済んでいるため、次年度以降は調査・分析をより一層進めて、本年度実施できなかった判断・評価に関する文末機能表現および節連鎖に関わる文中機能表現の調査・分析を行って遅れを取り戻すとともに、並行して最終課題である作文・推敲につながる文法指導法の開発に結びつけていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の課題は作文・推敲につながる文法の知識・技能の解明とその指導法の開発であるが、その実現には、中学校における文法指導のトータルデザインを行ったうえで、作文・推敲につながる文法指導の開発を行う必要がある。そこで、次年度は中学校における文法指導に関して、これまでの研究を踏まえて中学教師向けの解説書を作成し、その中で、作文・推敲につながる文法指導についても明らかにしていくこととしたい。また、本研究の調査・分析の対象は中学生の作文であるが、小学生と比較・対照して、文法的不具合や機能表現の出現傾向とその推移を捉えていくため、実施済の小学生調査の精査も合わせて行うこととしている。当初計画の未実施分についても小学生調査の精査を合わせて行っていくが、基本的な作業内容に変更はなく、作業も熟達してきているため、研究計画からの遅れが解消されるものと考えている。
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Causes of Carryover |
研究計画の未実施分の使用額が残っている。特に節連鎖に関する機能表現の調査・分析については、調査結果の集計・整備を業者に委託する予定で、その費用が使用額の大半を占めている。委託業者はすでに選定が済んでおり、早期に依託を行って、未実施分の調査・分析を完了させたい。
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