2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K02818
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高木 幸子 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (70377175)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 教師の成長 / 保護者との関係 / 同僚との関係 / 家庭と仕事の両立 / ライフコース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,これからの時代を生きる教師を支えるためにどのような支援が必要なのかを明らかにすることを目的としている。研究1年目に実施した質問紙調査を基に,分析対象者とした33人(家庭と仕事の両立に関する調査項目は37人)の回答データ分析を進め、その際は教職経験年数により3区分し考察を深めてきた。また、卒業後のライフイベントによる多様なライフコースを生きる教員への聞き取り調査を行ってきた。 令和4年度は,質問紙調査のうち「同僚や保護者との関係構築」に関する分析,「仕事と家庭の両立」に関する分析及び11人の教員からの聞き取り調査を行った。 「同僚との関係作り」は,教師になって5年以内は教員としての業務を滞りなく進めるための関係作りが中心であり,その後,職場の構成員の一員としての関係作りを重視するようになっていた。また,「保護者との関係作り」については,教職経験が短いうちは,子供の良さを伝えることに注力し,その後,良い点も課題も情報共有して保護者と足並みをそろえるようになり、教職経験が11年以上になると,保護者の思いを大切にして寄り添うことを重視し関係構築しようとしていると整理できた。 「家庭と仕事の両立」については,教職経験5年以内では、多忙な日々の中で,教職を続けていくことへの展望をもてず不安が芽生えており,先輩教員や同僚との関係性の維持に気を遣っている様子がうかがえた。教職6年以上の教員では、同僚や支援員との関係構築に向けて努力する様子と重点を置く内容の判断がなされていると推察された。教職11年以上の教員は、生活に合わせた制度活用と制度活用しても両立維持が難しいことが記述されていた。これらの分析結果は投稿しているが公開には至っていない。 聞き取り調査については,11件の聞き取りを行い発話プロトコルを基に,各ライフストーリーを可視化して論文化する準備を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和4年度までに予定していた質問紙調査の実施と結果を基にした分析は,計画通りにおおむね順調に進めることができているが論文化が遅れている。授業観察は,コロナ感染症予防対応のために学校にはいっての観察が大変困難であったため計画が進んでおらず,令和4年度末までに収集した授業観察データを、単独で分析材料として扱うことは厳しいと判断している。代わりに,分析対象者の学部生時代の授業記録等を当該者の承諾のもと検討材料として使用し,考察を深めることが可能かを検討中である。 聞き取り調査は,令和4年度に11人の聞き取り調査を行い,それまでに聞き取りをした内容も含め,発話プロトコルの作成と整理を行っているところである。聞き取り調査からは,どの教員もそれぞれ個別のライフストーリーを生きていることが確認され,その文脈は多岐にわたっていることがわかっている。彼らの人生が個別の人生であることを前提としつつ,例えば結婚や出産というライフイベントを経験するかしないかで,教職生活の道筋にいくつかのモデル経路が形成されると推察している。聞き取りを行った教員のストーリーを分析材料として,ライフイベントにより直面する課題や特徴の共通性を見出すために,複線経路等至性アプローチ(TEA)の方法論を用いて整理することで,それぞれの教職生活を可視化できるのではないかと考えている。 以上、当初計画からは相当遅れているが,調査に協力いただいた教員の苦労や工夫にかかわるデータを得られていることから,残された期間で教職生活を支援できる内容や要件の抽出及び考察を深めていけるよう整理を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では,「質問紙調査」「授業観察」「聞き取り調査」の各内容を分析データとして用い分析する予定であったが,「授業観察」に関して一部計画を変更して以下のように進める予定である。 「質問紙調査」の分析は,これまでに分析結果をまとめてきているので,引き続き,教職経験年数の大小による3区分の特徴や違いに着目して,特徴や違い,教職経験年数による中心課題の変容の全体について論文化を進める。 「授業観察」については,令和4年度末までに蓄積している授業データを用いるとともに,これまでに蓄積している学部学生時代の授業記録データの活用を検討を進める(令和5年度に新たに授業観察データを収集することはせずに,収集しているデータを基に分析を進める予定である)。 「聞き取り調査」については可能な範囲で聞き取り人数を増やし,ライフイベントに伴う家庭生活の変化と教職生活との関係の理解を深めていく。その際に発生するデータ分析やデータ整理のための費用はアルバイトを雇う。また,個別の教職経験の歴史に基づいてライフコースについての語りを分析材料とする。この個々の教員のライフコースの可視化についても、聞き取りデータに基づく発話プロトコルの作成のために、アルバイトを雇う。発話プロトコルを基に,複線経路等至性アプローチ(TEA)の方法論を用いて個別の事例の中にある,共通課題や岐路などについての考察を深めていけるのではないかと考えている。
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Causes of Carryover |
当初計画では,「質問紙調査」「授業観察」「聞き取り調査」の各内容を分析データとして用い分析する予定であったが,論文化が遅れていること、コロナ禍の影響が残る中「授業観察」の実施ができなかったこと,聞き取り者の数により、次年度使用額が生じている。令和5年度は,次のように考えている。 「質問紙調査」の分析結果については,論文化を進め投稿費用等に使用する。「聞き取り調査」については可能な範囲で情報収集を行い旅費として使用する。また,聞き取りデータの発話プロトコル作成やデータ整理は,アルバイトを雇い謝金を支払う。 生じた次年度使用額については,聞き取りに係る旅費,プロトコル作成やデータ整理のための謝金,調査結果をまとめ調査協力者に報告する費用として使用する。
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