2020 Fiscal Year Research-status Report
類推において必要な知識の想起を促進する方法とその評価法に関する理論的・実証的研究
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20K02828
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
中川 裕之 大分大学, 教育学部, 准教授 (00450156)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 類推 / 評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「ベースの想起や評価の促進方法を明確にする」、「ベースを想起,評価する能力の長期的な変容を捉える水準を設定する」という二つを達成することを目的としている。本年度はその研究の1年目であり、下位目標Ⅰである「ベースの評価を促進する方法を導出する」を設定し、研究を進めてきた。 先行研究を考察した結果、ベースを評価する方法には様々なものがあることが明らかとなったため、本年度は「知識構成における類比の可能性を確認する方法」に着目し、その方法によってベースの評価を促す方法を導出するために、Clementの研究をはじめとする認知科学の知見を視点として数学者であるオイラーが類推する事例を分析し、オイラーが類推した推測を評価する過程について考察した。その結果、知識構成における類比の可能性を確認する方法として、ターゲット周辺の複数の対象でベースからターゲットに写像する関係が成り立つかを調べることを導出した。 しかし、附属中学校で計画していた評価の促進方法を検証する調査研究はコロナ感染症のために延期することとなった。このため、今年度は、調査や授業実践で活用する教材を開発することとした。導出した方法によって中学校数学科の教科書にある教材を分析した。その結果、導出した方法で想起したベースを評価する過程を経験できる教材として,多角形の内角の和から星形n角形の角の和について類推する教材を開発した。また、平面図形から空間図形について類推する教材として方べきの定理を活用する教材も開発し、事例研究を通して導出した方法で想起したベースを評価する過程を経験できることを例証した。 そして、これらの研究成果を日本数学教育学会秋期研究大会において研究発表するとともに、日本数学教育学会誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では「ベースの想起や評価の促進方法を明確にする」、「ベースを想起,評価する能力の長期的な変容を捉える水準を設定する」という二つを達成することを目的としている。本年度はその研究の1年目であり、下位目標Ⅰである「ベースの評価を促進する方法を導出する」を設定し、研究を進めてきた。 下位目標Ⅰ「ベースの評価を促進する方法を導出する」を達成するために、4つのことを計画していた。第一に、これまでの研究成果の整理と仮説、課題の抽出である。第二に、文献研究を通してベース評価の促進方法を導出することである。これら二つについては順調に行うことができた。 続けて、第三に、評価の促進方法を検証する調査研究(附属中学校の生徒を対象)を実施すること、第四に、調査結果の分析を通して評価の促進方法を改善することである。これらについてはコロナ感染症の影響から社会情勢を考慮して延期することとした。 代わりに、大学生十数名や中学生数名を対象とした事例研究に変更し、導出した促進方法の有効性を検証することとした。その結果、導出した方法の有効性を確認することができた。また、方法の運用方法についても示唆が得られ、当初想定していたよりも詳細な運用規則を設定する必要があることが明らかとなり、運用方法、規則を設定し直した。 また、残った期間で今後の調査や授業実践で活用する教材を開発した。そうすることで、次年度以降の調査研究や実践研究へとつなげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では「ベースの想起や評価の促進方法を明確にする」、「ベースを想起,評価する能力の長期的な変容を捉える水準を設定する」という二つを達成することを目的としている。2年目以降は、下位目標Ⅱである「ベースの評価からベースの想起につなげる方法を導出する」の達成を目指して研究を進める予定である。 当初の予定では、2年目は4つのことを計画していた。第一に、調査結果の再分析を通して想起の促進方法を構想すること。第二に、文献研究をさらに進めて、ベース想起の促進方法を導出すること。第三に、想起,評価の促進を検証する事例研究(ペア8組16名)を実施すること、第四に、調査結果の分析を通して想起,評価の促進方法を改善することである。 これに加えて、コロナ感染症の影響で延期された「評価の促進方法を検証する調査研究(附属中学校の生徒を対象)を実施すること」と「調査結果の分析を通して評価の促進方法を改善すること」も行いたい。調査研究については、コロナ感染による社会情勢を考慮して進める必要はあるけれども、附属中学校の教員などと意思疎通を常日頃から図ることにより実施を検討したいと考えている。このように、研究として遂行する内容は増えたけれども、研究計画を変更して既に教材開発は終えていること、また事例研究を通して促進方法やその運用方法、規則の改善を進めていることから、実施は可能であると考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症の影響で附属中学校で計画していた調査研究を延期したため、その調査研究の費用が次年度使用額として生じました。このため、コロナ感染症による社会情勢次第ではありますが、附属中学校と相談のうえ翌年度に調査研究を行う予定であり、次年度使用額はその調査研究において使用する予定です。
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