2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K02838
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
川口 厚 桃山学院大学, 経済学部, 准教授 (10780851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 豊 東京理科大学, 教育支援機構, 教授 (10509938)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オーストラリア / 地域スポーツクラブ / 多文化共生推進の機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度4月から1年間、所属機関の研修制度を利用しLaTrobe大学(オーストラリア・メルボルン市)の客員教員として基課題の研究を進めた。しかし、調査対象地域であるメルボルン市を含むビクトリア州は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により非常事態宣言が発令されるなど、調査活動が制限された。上半期は、地域スポーツクラブが閉鎖され、フィールド調査を実施することができなかった。そのため、地域スポーツクラブ指導者らを対象とした電話インタビュー調査を実施し、情報収集を行った。これに加えて、先行研究と史資料の検討によるオーストラリアの地域スポーツクラブの歴史的背景及び現状と課題に関する理論的研究を進めた。12月以降は、オーストラリア野球連盟職員や、地域スポーツクラブの経営支援を行うNPO法人の代表者、豪州の地域スポーツクラブ研究を専門とする研究者らを対象としたインタビュー調査を行った。 これらの研究成果として、オーストラリアの地域スポーツクラブにおいて、多文化の背景をもつ人々の地域社会への参加や異文化間の交流を促進するプロセスが看取された。1950年代から多くの移民を受け入れてきたオーストラリアは、1970年代以降、多文化主義政策を進めてきた。それゆえ、多文化の背景をもつ人々が、地域スポーツクラブ活動に参加してきており、そのプロセスにおいて親交・相互理解を深めてきた。一方で、今後日本がますます多文化社会になっていく中で、地域スポーツクラブにおける多文化共生推進の機能に注目した研究は少ない。 基課題の研究を通して、オーストラリアの地域スポーツクラブにおける多文化の背景をもつ人々の社会参加を促進する、多文化共生推進の機能を明らかにすること、これを踏まえて日豪比較研究を進めることが今後の課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は、メルボルン市の地域スポーツクラブの指導者を対象等としたインタビュー調査やフィールド調査を実施し、オーストラリアにおける地域スポーツクラブの意義や現状について探索的に検討することを目標とした。しかしながら、基課題の調査対象地域であるメルボルン市を含むビクトリア州は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により非常事態宣言が発令されるなど調査活動が制限された。そのため、日本の研究分担者とのオンライン会議を通して、定期的に進捗状況の確認及び今後の研究の進め方について検討を行い、社会情勢を踏まえた研究計画の軌道修正を図ってきた。 上半期は、オーストラリアの地域スポーツクラブ指導者らを対象とした電話インタビュー調査を実施し情報収集を行った。また、日本の公立中学校の教師や教育委員会指導主事を対象としたオンラインによるインタビュー調査を継続的に実施し、中学校運動部活動及び教育行政の動向に関する情報を収集してきた。12月以降は、オーストラリア野球連盟職員や、地域スポーツクラブの経営支援を行うNPO法人の代表者、豪州の地域スポーツクラブ研究を専門とする研究者らを対象としたインタビュー調査等を通して、メルボルン市域における地域スポーツクラブの実態把握を行うとともに、研究協力者の確保に取り組んだ。 当初の予定に比べて研究計画に遅れはみられたものの、本研究を通してオーストラリアの地域スポーツクラブにおける多文化共生推進の機能に関する新たな知見が得られた。そして、オーストラリアにおける地域スポーツクラブ実務者や研究者との関係性が構築されたことは、本研究をさらに発展させる足がかりとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、以下の2点について取り組む。 1点目として、日本の公立中学校及び総合型地域スポーツクラブを対象としたフィールド調査、インタビュー調査を実施する。上述した研究を通して、総合型地域スポーツクラブと中学校運動部活動の連携及び運動部活動機能の社会教育団体等への移行の可能性について検討する。なお、現時点では、阪神地区A市教育委員会から調査協力の内諾を得ている。研究代表者が、2020年度に新たに立ち上げられたA市部活動検討会に構成員として参加し、2020年度に生徒及び保護者を対象に実施された質問紙調査の分析、管理職や教員らへのインタビュー調査等に取り組む。 2点目として、オーストラリアの地域スポーツクラブの多文化共生推進の機能についての研究を進める。メルボルン市の地域スポーツクラブを対象とした参与観察及びインタビュー調査を中心とした質的調査による実証的研究を行い、地域スポーツクラブにおいて多文化共生を促進するプロセスを明らかにしていく。このことを通して、(1)地域スポーツクラブにおける多文化の背景をもつ人々の社会参加を促進する場の機能、(2)地域スポーツクラブにおいて全ての人々に育成される社会参加を動機づける社会情動的スキルの要素について検討する。 上述した研究活動を推進するために、研究分担者と定期的に会合を実施し研究の進捗管理を行う。なお、新型コロナウイルスの感染拡大等の影響により、当初予定していた研究活動の実施が困難な場合は、社会情勢を注視した上で研究計画の修正を図る。
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Causes of Carryover |
2020年度は、研究代表者が、物品費として豪州の地域スポーツクラブを対象とした質問紙調査結果等の分析のために活用する統計ソフトの代金を計上し、旅費として豪州から日本国内の学会に参加するために必要となる往復の航空旅券代を計上していた。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、豪州国内でフィールド調査を実施することが困難な状況となった。また、上述した調査研究を基にした日本国内学会での発表を中止した。これらの事情により未使用額が発生した。 2021年度は、日本国内の調査に加えて、豪州の地域スポーツクラブを対象としたフィールド調査等を実施する。2020年度の未使用額は、主として豪州調査のために必要となる旅費等に充当する予定である。
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