2021 Fiscal Year Research-status Report
数学的探究における行為主体による評価・改善を促進するための教材開発と評価
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20K02852
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
茅野 公穗 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (20400658)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中学校数学 / 数学的探究 / 開発原理 / 評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,数学的探究における行為主体による評価・改善を促進するための教材開発に関して,以下の成果を得た。 ●教材(暫定版)を用いた授業データの分析 領域「関数」の教材として,時間と距離の関係を表すグラフを直線とみなして問題解決することをねらいとする授業を実施した。そのデータ分析から,一次関数を用いた予想と実際の結果と違いが生じたという事実に対して,その要因へと生徒の考察が進展したこと,また,グラフの傾きを求めた過程を振り返り,グラフをかくときの点の選び方に焦点化して考察が進展したことを確認することができた。いずれも,問題解決の状況「状況を厳密な表現を用いずに表し,証明を含め問題解決を基に状況を明確にしたり,新たな状況を生み出したりすることができる余地がある課題を用いること」(教材開発の原理(暫定版)(1))あるいは探究目的に照らした評価・改善の初期設定「探究する動機・目的に照らして素朴な証明や解決方法を評価・改善する機会を初期から設定すること」(同原理(4))の下で意図していた活動である。さらに,時間と距離の関係を一次関数とみなす際に,より精度の高い予想を得るためにデータの選び方を工夫することに加え,グラフが直線ではない新しい関数関係を用いる可能性への言及も確認することができた。これは,問題解決に用いた一次関数の役割や限界について生徒の認識を深めたことを示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
教材開発原理(暫定版)に基づいた教材(暫定版)を用いた授業の実施ならびにデータの質的な分析は,授業の実施に一部コロナ禍の制約を受けつつも概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
教材開発原理(改訂版)に基づき教材(改訂版)開発を進める。また,開発した教材(改訂版)を用いた授業を新型コロナウイルス感染症の感染状況に鑑みつつ実施し,ビデオ記録や記述物の複写等のデータ収集及びデータの質的な分析を通して,改訂による促進性,阻害性を解明する。教材(改訂版)を用いた授業がコロナ禍によって実施できないときには,意図した活動をよりよく実現するために,本研究目的以外で得ているデータとの照合によって教材(改訂版)を吟味し,改善点を特定する。
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Causes of Carryover |
(理由)主として,コロナ禍において国内外学会が延期あるいはオンライン開催等に変更されたため旅費が不要となり,次年度使用額が生じることとなった。 (使用計画)対面による学会開催が再開された際には,日本の学習環境等に特化した情報収集を充実するために,国内学会への参加旅費に使用する。その際,授業を実施していただく研究協力者の教諭を含めて対面による情報収集・意見交換を行う予定である。
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