2020 Fiscal Year Research-status Report
「書くこと」における言語感覚(適否)の数値的可視化に基づいた教育内容の構築
Project/Area Number |
20K02861
|
Research Institution | Hokkaido Bunkyo University |
Principal Investigator |
矢部 玲子 北海道文教大学, 国際学部(外国語学部), 准教授 (40633376)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 麻裕子 早稲田大学, グローバルエデュケーションセンター, 准教授(任期付) (40648317)
桐山 聰 鳥取大学, 教育支援・国際交流推進機構, 准教授 (70423423)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 言語感覚(適否) / 国語教育 / 「書くこと」 / 教育内容 / 数値的可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
言語感覚関係の教育や言語活動に関する文献調査研究を行い、国語教育その他多様な分野からの知見を得、研究や学会発表構築等に活用できた。 大学1年生276人を対象に「文章作成経歴調査」を実施した。小中では、所謂行事作文と読書感想文で80%以上、高校では小論文が30%台でその他は多様化した。また大学で学びたい文章作成技術は、「自分の考えを述べる文章(45%)」と「事実の経過を述べる文章(35%)」だった。 11月に別の学生を対象とした同内容の調査を実施し、前回とほぼ同様の結果を得、調査内容の有効性が証明されたと結論づけた。左記に基づき、第27回大学教育研究フォーラム(2021年3月)で分担者と2件の発表を行った。 また、学生たちが保管している、小学校6年生で書いた文章を収集し、アルバイターを雇用してテキストデータ化した。これらの文章群から、「書くことにおける言語感覚の修得実態を物語る現代の例文」を選定した。同時に、時代や地方の異なる文章も選定した。 上記に基づき、選定した2例文について、学生41人を対象に添削実験を実施し、「小学生が作成した文章を大学生が添削する」際の、言葉の選択実態を可視化した。併せて、添削する際に重視した言語事項を質問し、添削の根拠となった言語感覚を可視化した。また、国語教育関係者の指導実態と一般人との言語感覚に対する意識差の明確化を目的とした調査内容を、次年度実施に向けて構築した。 文献:日本作文の会監修・編、1994、しぶがき、鉛筆の子ども第5号(岡山県児島郡荘内小学校)、日本の学級文集第19巻、大空社、99-101
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、代表者分担者の専門領域を活用し、かつ研究内容と合致する文献が順調に収集されている。特に、『戦前戦後日本の学級文集』シリーズは、添削作業から言語感覚を可視化する実験の、現代の文章との比較例として、大変有効に機能した。 また、大学生を対象に実施した、数次の「文章作成経歴調査」の結果から、初等中等国語教育が、「書くこと」の言語感覚修得に機能している状況を可視化できた。また、先行研究で課題とされていた、「学生が大学入学前にどのようなライティング教育を受け、何ができて、何が足りないのかの実態を把握(中略)することが重要である(中島2018:103)」への解決にもつながった。 また該当年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全参加学会発表がオンライン開催となった。今回は、対面発表時での意見集約が困難だったのが、計画と異なる点であった。 上記解決のため、遠隔会議システムによる発表時に、代表者のメールアドレスを画面上に明示し、意見を募ったところ、通常の対面発表時より少数だったものの、反応が複数あった。その後、個人的に連絡を取り合うことで、調査内容改良のための情報収集ができた。 文献:中島祥子、2018、第6章 初年次教育におけるライティング教育 組織的な取り組みと実践の一例、大学と社会をつなぐライティング教育、くろしお出版、102-103
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度:国語教育指導者と一般人を対象に、言語感覚の指導と活用の実態に館関する意識調査を実施する。これは、学習者の習得状況以外の国語教育、並びに国語教育以外の視点から、「何をもって言語感覚の習得とするか」という問いに対する答えを得るためである。初年度の調査結果と併せ、言語感覚の教育内容構築に関する示唆を得る。その間、学会発表や論文投稿による発信を行い、得られた批判を教育内容の修正に活かす。なお、調査データの集計や資料作成にアルバイターを雇用し、適宜謝礼を支払う計画である。 2022年度:前年度の調査結果分析に基づき、学会発表や論文投稿による発信を行う。成果の妥当性に関して得た評価を、教育内容の修正に活かしつつ、言語感覚の教育内容を構築する。具体的には、学習指導要領中の「言語活動例」のような簡潔な文の形にまとめ、実際に教育現場での授業実践に適用し得る形態(ワークブック)にして提案する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大による学会オンライン開催により、旅費執行ができなかった。現在も感染拡大は続いており、状況は不透明である。次年度以降、対面で学会が開催されることになれば旅費を執行する予定である。状況が改善されず、オンライン開催が継続される場合は、学会参加費、登壇料、投稿料、書籍購入や調査、物品購入などに使用する予定である。
|