2020 Fiscal Year Research-status Report
聴覚・視覚等障がい者と共に楽しむユニバーサルな音楽・美術鑑賞プログラムの開発
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20K02862
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Research Institution | Uekusa Gakuen University |
Principal Investigator |
高木 夏奈子 植草学園大学, 発達教育学部, 教授 (50531620)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ユニバーサル / 音楽・美術鑑賞 |
Outline of Annual Research Achievements |
徳島県立近代美術館における「ユニバーサル美術館展 ハロー、お気に入りをさがそう!」(2020年7月23日~9月13日)の関連ワークショップとして、2020年9月5・6日に「和の音色で楽しむ美術鑑賞」を実施した。活動内容は両日とも同じで、①楽器の紹介(琴、三味線、篠笛)②楽器の音色を楽しむ(琴・三味線・篠笛の生演奏を鑑賞し、それぞれの音色を味わう)③実際に自分で琴の音を出してみる④「琴の音を色で表すとしたら?」という指示で色紙を選び、その理由を共有する〔その後展示室に移動〕⑤琴・三味線・篠笛のフレーズ(録音)を聴きながらの展示作品の鑑賞と共有⑥CDの曲を聞きながら、音楽に合う作品を選ぶ(音楽と共に美術作品を味わい、「どうしてそう思ったのか」を共有する)⑦ワークショップに参加してのアンケートのお願いと回収、である。 参加者は5日は成人のみで10名、6日は親子3組10名を含む14名で、聴覚障がい者(成人)1名は両日参加、視覚障がい者(成人)が5日に参加した。聴覚障がいの参加者は、「音をからだで感じるユーザインタフェース」(富士通株式会社HPより引用)である「Ontenna」(オンテナ)を用いて自身で音の振動で感じながら音楽を鑑賞し、他の参加者の発言等は手話通訳で情報保障を行った。視覚障がい者は、触察図を用いたり、支援者による口頭での作品の説明を聞いたりして展示作品を鑑賞した。 アンケートの自由記述では「音楽と他の表現を比較することで、ただ受動的に聞いたり見たりするのではなく積極的に思考したり感じようとしたりできた」「展示室の中で『音を聴く』という発想が、単純であっても、とても新鮮な体験につながる。」「聴こえない方が音を鑑賞する。見えない方が絵を鑑賞する。価値観が変わるようなステキな体験でした。」などの感想が得られた。現在、その結果を分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染の広がりにより、対面によるワークショップを実施しにくい状況が続いている。9月に聴覚障がい者、視覚障がい者が参加するワークショップを1回実施できたが、その後のインタビューなどは未実施である。
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Strategy for Future Research Activity |
聴覚・視覚障がい者を含めた参加者が互いに鑑賞を共有し補い合うワークショップを実施し、参加者へのインタビュー調査からその成果と課題を分析し、ユニバーサルな音楽・美術鑑賞プログラムを開発する。 オンラインを活用したワークショップも検討しているが、聴覚障がい者がオンライン上でどの程度の音楽を聴き取れるのか、視覚障がい者への情報保障の方法についてなど検討すべき課題がある。感染状況が落ち着き次第、対面でのワークショップを実施できるように準備を進める。 参加者へのインタビューは、可能であれば対面で実施したいが、書面での調査も検討している。視覚障がい者へのインタビューは、音声にならざるをえないが、機器操作の支援者が同席してのオンラインでの実施も検討する。
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Causes of Carryover |
令和3年度において徳島県立近代美術館での対面でのワークショップを計画中である。 令和2年度のワークショップで用いた「Ontenna」は、別売りのコントローラーを用いると、機器を装着している使用者が音源から離れても、マイクで音をひろって信号を受信者に送信できる。現在、「Ontenna」とコントローラー各1台を購入済みであるが、複数の聴覚障がい者が同時にワークショップに参加できるように台数を増やすことを検討中である。 引き続き関連書籍を購入したり、徳島でのワークショップ実施のための旅費等を使用する計画である。
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