2023 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚・視覚等障がい者と共に楽しむユニバーサルな音楽・美術鑑賞プログラムの開発
Project/Area Number |
20K02862
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Research Institution | Uekusa Gakuen University |
Principal Investigator |
高木 夏奈子 植草学園大学, 発達教育学部, 教授 (50531620)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ユニバーサル / 音楽鑑賞 / 聴覚障がい / 美術鑑賞 / 視覚障がい |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の最終年度となる令和5年9月に徳島県立近代美術館(以下、徳島近美と記述)と協働で、聴覚障がい者・視覚障がい者を含む14名の参加を得て音楽・美術ワークショップ(以下、WSと記述)を実施した。参加者を「どなたでも」として研究期間中に徳島近美において対面で実施したユニバーサルなWS(令和2年9月、令和4年9月、令和5年9月)では、いずれも事後アンケートにおいて「音楽と美術を同時に鑑賞するのが新鮮だった」「様々な参加者の感じ考えを知り鑑賞が広がった」「障がいのある人とない人が共に活動できて価値観が変わった」という趣旨の回答を得た。これらのWSは、①音楽を身体全体で感受し、②感受した音楽を様々な媒体で表現することにより鑑賞が深まるとともに③様々な人の参加により多様な鑑賞の共有が可能になる、という音楽学習上の利点とともに、ユニバーサルな活動として共生社会の実現への一助となる。 このようなWSを他機関でも実施するための活動の留意点を以下のように抽出した。事前準備として、①聴覚障がいの参加者には手話通訳者の手配や、音を振動で感じることのできる機器の活用、②視覚障がいの参加者には、絵画作品の触察図の準備や、帯同するヘルパーの席及び安全な動線の確保、③鑑賞作品選択の工夫(音楽の場合は強弱やテンポの変化などが明確で振動として感受しやすい楽曲)等があげられる。活動場面としては、①音楽と美術を共に楽しむための導入となる補助的な活動の設定、②様々な(例えば感覚過敏のある)参加者に活動において合理的配慮を行うことに加え、③受容的・共感的な場の創出が極めて重要である。活動の前後においては、「障がい者」=「支援される人」ではなく、「他の(健常者を含めた)参加者と相互に支えあう人」として主体的な参加を可能にする仕組みの構築(例えば、イベントサポーターとしてWSの運営に参画する等)が重要である。
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