2022 Fiscal Year Annual Research Report
国語教育学の発展における日本語学が果たした役割に関する研究-昭和前期を中心に-
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20K02869
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
吉田 雅昭 帝塚山大学, 教育学部, 准教授 (40709309)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国語教育学 / 日本語学 / 時枝誠記 / 藤原与一 / 奥田靖雄 / 鈴木重幸 / 標準語教育 / 学校文法 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は本研究全体のまとめ及び補足として必要な研究を行った。当該年度は2回の研究発表を行い、その内容を論文としてまとめた。学会発表の1回目は「国語教育と方言研究-藤原与一の理論的体系に関して」という題名で、『第142回 全国大学国語教育学会東京大会(オンライン)』においてZoom発表形式で行った。この発表は方言研究者で国語教育学者でもある藤原与一の国語教育論に方言理論が深く関わることを述べた。本発表を基に『日本語変異論論の現在』(ひつじ書房刊、印刷中)という論文集の中で、同タイトルの論文を公刊する予定である。 2回目の学会発表は「鈴木重幸の学校文法批判について-戦後文法教育をどう捉えるか-」という題名で、『社会人文学会2022年度大会』において発表した。これは日本語研究者の鈴木重幸という人物の、文法教育に関する考えを考察したものである。そして本発表を基に、同タイトル論文が『帝塚山大学子育て支援センター紀要 第4号』に掲載された。 もう一つ発表した論文は、「藤原与一の初期国語教育論について : 1930、40年代の言説」という題名で『帝塚山大学教育学部紀要 第4号』に掲載されたものである。これは藤原与一の戦中・戦後期の考えを考察したもので、教育思想の変化が激しかった昭和前期において、一貫して方言を基盤としつつ話し言葉重視の教育論を展開した藤原の独自性を明らかした。 本研究期間全体を通じ、昭和前期に活躍した日本語学者による国語教育論の特徴を明らかにした。東京大学教授だった時枝誠記は、国語教育において言語教育を前面に押し出し、言語技術の訓練が国語科の主要内容だと考えた。広島大学教授だった藤原与一は方言研究の成果を活かし、地域の実情を考慮した教育の必要性を唱えた。民間教育団体に所属した奥田靖雄や鈴木重幸は語彙的な意味や文法体系など、客観的で体系的な言語教育の必要性を主張した。
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