2020 Fiscal Year Research-status Report
実践的知識を育成する体育科教育法の構築~講義内容と連携した事例映像の製作と活用~
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20K02876
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
七澤 朱音 千葉大学, 教育学部, 准教授 (10513004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉野 聡 茨城大学, 教育学部, 教授 (10334004)
糸岡 夕里 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (50387966)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 体育科教育法 / 体育授業 / 教えることの心配 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、本学が開講している必修科目である初等体育科教育法を受講した三年次生を対象に二つの研究を実施し学会で発表した。 一つ目として、前期の同講義を受講し、分析対象となる旨の同意を得られた全クラスの受講生222名(有効回答数)を対象に、5月(プレ調査)と7月(ポスト調査)に「体育授業を教えることの心配」に対する質問紙調査を行った。結果、講義の前後で「体育にかかわる行事予定の理解」と「子どもたちへの悪影響」の二項目を除く、「1子どもが安全に運動できる」~「18よい体育授業ができる」までの全18項目中16項目の不安が有意に減少した(p<0.01)。一要因分散分析を用いて減少率を分析したところ、中でも「3どの運動を教えるべきかを理解している」に対する心配が最も減少した。このことから、同講義の中で体育科の学習内容について学びを深めた結果、受講者が体育科の学習内容について理解を深めることができたと考えられる。 二つ目として、前期の同講義を受講し終え、教育実習でも体育授業を担当し、5月(プレ調査)当初から継続的に追跡調査が可能だった15名を対象に、引き続き「体育授業を教えることの心配」に対する質問紙調査を行った。結果、17項目に有意な心配の変化が見られず、唯一「13各種目に必要な運動技能を指導できる」に対する心配が有意に増えた(p<0.5)。これにより、教育実習で実際の子ども相手に指導したら、当初想定していたよりも指導が難しく、“教えるべき学習内容はわかっているが子どもの技能的達成を導く道筋を作る”という具体的な指導は難しいと捉える様子が明らかになった。 令和2年度に関しては、コロナウイルスの影響で当初予定していた授業撮りが全くできなかった。しかし、茨城大学と愛媛大学の研究協力者とのミーティングを重ね、本大学のシラバスの再検討や撮影の今後の見通しなどについては検討することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、小学校の実際の映像を収録・編集し、大学の初等体育科教育法(講義)で活用することが目的である。研究のオリジナリティである、“教師目線の動画”や“体育科教育学的知見を学ぶことのできる動画”は、教育現場に実際に足を踏み入れないと撮影できない。教育現場に近ければ近いほど、学びの多い映像を製作可能だと考えている。 しかし、新型コロナウイルスの影響により、小学校に入り授業を撮影させていただく許可が全く下りない状況が続いた。研究に関して協力体制の整っている本学の附属学校でさえ、授業研究がなかなか難しく、その状況が目下続いている。 ただ、この状況をただ受け入れ文字ベースだけで講義を展開してしまうと、体育科教育学の質の高い知識学習が難しくなり、何より学生達の教師としての(児童目線に立った)より実践的な思考力が伸びないと考え、急遽「文部科学省が公式にアップロードしているYouTube動画集」を教材として用いることにした。この動画は10分~15分ほどの短時間の中に授業のエッセンスが詰まっているという点でとても有用だったが、授業のダイジェストをまとめているものであるため、教育法の授業でポイント的に活用するためには工夫が必要だった。ビデオの時間を指定して見させたり、遡って見させたりしながら展開する必要があったため、受講者たちは多少観にくかったのではないかと省察している。 以上の方法により、なんとか映像を用いて講義は展開したが、オリジナルの授業映像は製作できなかった。ただ、この困難の中でも、シラバスの改良や同講義の指導案の作成などは可能であったため、茨城大学と愛媛大学の研究者と会合を繰り返し持ち、研究の検討を引き続き行っていた。 (4)遅れている、と評価したのは、主に授業映像を撮りためることができていないためである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、撮影協力の可能な学校を探すことが最も大きな課題となるだろう。ただ、令和3年4月の段階で緊急事態宣言が出ている現状を鑑みると、学校に打診することは次年度も限りなく難しい状況なのではないかと危惧している。現状、本研究の連携三大学のどの地域もコロナの影響を受けているため、千葉大学以外の他二大学に授業撮りを委託することもほぼ不可能な状況となった。これがまた大変悩ましく、研究の遂行を妨げる部分である。 令和3年度初めの会合で共同研究者とこの困難について審議した結果、過去の研究で収録した映像を見直し、その中から本研究で用いることのできる映像をピックアップする方法に暫定的に決めた。今後は、三大学の研究室が保管している過去の映像を再編集し、初等体育科教育法で暫定的に活用していく予定である。そして、前期の授業の中でそれを活用し、文科省動画を用いた昨年度と、より教育学的知見に依った今年度の動画を用いて学んだ二年間の成果を比較する。具体的には、受講生の課題レポートの変化(テキストアナリティクス的な分析)から、成果を把握していきたいと考えている。 なお、ワクチン接種などが進み、学校現場における授業撮りが可能になったら、その段階から授業撮りを開始し、なるべく多くの場面を撮りためて、今後の授業映像を積み重ねて行きたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で、当初予定していた授業撮りができなかったため撮影用の機材購入費が未使用となった。子どもたちの学びの様子を研究の参考にするために、授業者に依頼して(研究者不在で)児童の発話を収録したのみに留まった。また、学会はすべてWEB開催となったため、出張にかかわる旅費の出費も発生しなかった。 当初、動画編集用にMac Proとディスプレイの購入を予定していたが、リモートワークが以前より増えている現状で機材の有効利用を考え、据え置き型のパソコンは購入せずにポータブルのものに代えて購入予定(検討中)である。 コロナウイルスの状況が好転し、授業撮りができる状況になってきたら、機材を徐々に購入して整備していきたい。
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Research Products
(2 results)