2021 Fiscal Year Research-status Report
Study for designing inclusive teacher-training program for foreign students in Japan
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20K02877
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
石田 喜美 横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (00612996)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
半沢 千絵美 横浜国立大学, 国際戦略推進機構, 准教授 (10734139)
松井 かおり 朝日大学, 保健医療学部, 教授 (70421237)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 言語する者(Languager) / つながりの学習 / 包摂的・協働的な学習環境 / インターローカリティ / 葛藤・ジレンマ / ワークショップ / ゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「言語する者(Languager)」としての学習・発達に関する議論を手がかりに,外国につながる児童生徒と日本語を母語とする児童生徒とがともに学習・発達する包摂的・協働的な学習環境をデザインすることのできる教師・支援員を養成・研修するための学習プログラムを提示することである.研究期間初年度は,文献研究を中心に,モデル構築のベースとなる理論について検討を行い,その成果を発表した。研究期間2年目となる2021年度は,オンラインでの実践を中心としながら,初年度に開発したモデルや理論に基づく教材開発や実践の試行を行ってきた。 本年度の研究実績は2つである。 1つは,外国につながる児童生徒の支援にかかわる人々が現場で直面した葛藤・ジレンマについて語りあいながら、知恵を継承したり、それぞれの考え方の背景にあるものを理解しえるような教材「クロスロード:外国につながる児童生徒支援員編(仮)」の開発である。この教材は、複数のローカリティの中で、外国につながる児童生徒の支援に関わる支援員・教師が、自分の置かれた状況を捉え直したり、それぞれの考えかたについて語りあったりするような教材として、現在、開発中であり、2022年3月に、言語文化教育研究学会大会内でこの中間報告にあたるワークショップを実施した。 もう1つは,教育学部の必修科目授業における教育プログラムの開発と試行である。2020年度の試行調査を踏まえたうえで、「やさしい日本語」の使用など、言語的ストラテジーの使用にも焦点を当てたプログラムを開発し、これをオンラインで実施した。現在、このプログラムの参加者たちへのインタビュー調査に基づき、特に、言語的ストラテジーの使用についてどのような学習が生じたのかについてデータを分析しており、2022年6月に開催される異文化間教育学会の研究大会こて、この成果を発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画初年度(2021年度)は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、実践研究の中止を余儀なくされ、当初予定していた理論研究と実践研究のうち、前者(理論研究)しか進めることができなかった。本年度は感染拡大の状況を鑑みつつ少しでも研究を進めるため、(1)教師・支援者に向けた教材開発および(2)オンラインでの実践開発に主軸を置き、実践研究を推進していくこととした。 (1)については、研究計画をこのように定めたことが功を奏し、岐阜・可児エリアにおいて外国につながる児童生徒へのボランティアに関わる人たちが感じている葛藤・ジレンマを中心とした教材開発を進めることができたことは、本年度の大きな成果である。教材「クロスロード(外国につながる児童生徒支援員編(仮)」の開発にあたっては、旧来から「クロスロード」の開発にかかわってきた矢守克也教授(京都大学防災研究所)および、住民主体での「クロスロード」開発プロジェクトを実現してきた李フシン氏(京都大学防災研究所・当時)の協力を得て、「クロスロード」作成ワークショップを開催するとともに、そのワークショップに基づいて「クロスロード:外国につながる児童生徒支援員編(仮)」の開発に着手することができた。またこの成果を、第8回言語文化教育研究学会にてフォーラム発表し、より多様な地域・状況に生きる人々へと展開する可能性を見出すことができた。 (2)のオンラインワークショップの開発・実施においては、将来、教員を目指す教育学部の学生たちと留学生とがオンラインでコミュニケーションを行うことによって、事前に学習した「やさしい日本語」を使用しながら、実際的な場面のなかでそれを使用してみる体験を実現することができた。現在この中で参加者が感じた葛藤・ジレンマの分析を行っており、これについても2022年6月に開催される異文化間教育学会第42回大会で発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度(2022年度)は、前年度進めてきた(1)シミュレーションゲーム型教材「クロスロード:外国につながる児童生徒支援員編(仮)」については、第8回言語文化教育研究学会でのフォーラム発表を踏まえて構築されたネットワークや、そこで見出された課題を踏まえながら、より多くの教師・支援員らの「声」を収集し充実した教材の開発へと結びつけていこうと考えている。そのため、具体的には、外国につながる児童生徒支援に関わる人々をより多角的に捉え、現在反映されていない「声」を収集するためのインタビュー調査の実施((1)-1)を行うとともに、それと並行して、本教材をインターローカルに活用していく可能性を探ることを目的としたワークショップ試行会の実践((1)-2)およびインターローカルな活用を視野においた教材活用マニュアルやファシリテーター育成に向けた検討((1)-3)を行っていく予定である。 また(2)オンラインワークショップについては、昨年度の実践の成果および課題の分析を進め、2022年6月の異文化間教育学会第42回大会での共同研究発表を行うとともに、そこでの議論の成果を踏まえて、プログラムデザインの再検討を行い、2022年12月頃に再度のワークショップ実施を試み、その成果を確認する。 また本年度は、これまで対面でのワークショップが実現困難であったために中止を余儀なくされていた、(3)神奈川・横浜市エリアでの「デジタルストーリーテリング」プロジェクトの実践研究も行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究年度初年度(2020年度)当初より、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初計画していた実践研究が実現できていない状況が2年間続いている。初年度(2020年度)は理論研究のみを実施し、研究期間2年目(2021年度)は、オンラインでのインタビューやワークショップに基づく教材開発や、実践研究としてのオンラインワークショップの開発・実施を行ってきたが、それでも、対面でないと開催できない実践・調査等については、いまだ実践研究が進められていない状況である。そのため、初年度より積み重なるかたちで未使用額が発生してきてしまっている。 現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響も落ち着きつつあるため、次年度は対面で開催できるタイミングを見計らいつつ実施ができていなかった実践研究についても実施予定であり、現在進めているオンラインワークショップおよび教材開発についてもより拡充するかたちで実施することで、現在未使用の予算を執行していこうと考えている。
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Research Products
(2 results)
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[Book] 「つながりの学習」研究ネットワーク:参加型の学際領域におけるこの10年を振り返って2021
Author(s)
Mizuko Ito, Richard Arum , Dalton Conley, Kris Guttierez, Ben Kirshner Sonia Livingstone, Vela Michalchik, William Penuel, Kylie Peppler, Nichola Pinkard, Jean Rhodes, Katie Salen Tekinba, Julliet Schor, Julian Sefton-Green, S. Craig Watkins, 石田喜美, 宮澤優弥, 千田真緒, 岡部大介
Total Pages
115
Publisher
Connected Learning Alliance