2021 Fiscal Year Research-status Report
社会的分散認知の共有や統合を図り科学概念の更新を目指す協働的な理科授業の開発
Project/Area Number |
20K02879
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐藤 寛之 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (30452832)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会的分散認知 / 科学概念 / 理科授業 / 協調的問題解決 / 理科学習プロセスシート |
Outline of Annual Research Achievements |
理科で学習する自然事象について子どもは、日常生活と関連させて、学習前に自分なりの考えを構築している場合も多い。そのため、理科学習を通して子どもが、他者(ヒト・モノ)のもつ情報(社会的分散認知)を自分の考えに適切に取り入れて、保持している科学的概念を変容させることも必要となっている。このような学習者自身にも学習状況の把握と調整を促す理科授業方略の開発を可能とするためには、理科学習で社会的分散認知を子どもがどのように共有し統合するのかについての知見を得る必要がある。 本研究では、「協調的問題解決による社会的分散認知の共有や統合を目指した理科授業デザイン開発」に関する研究を実施した。具体的には、学習問題に対する予想において表出した根拠別に小グループを形成して観察・実験をしたり、予想と得られた結果を関連させた考察を学級全体で吟味したりする等の、協調的な問題解決場面での様々な情報(社会的分散認知)の共有や統合により、子どもの科学概念構築を支援することが可能となる理科授業デザインの開発の視点を検討した。 2021年度までに実施した研究成果の精査から、本研究における理科授業デザインにおいて、以下の点が明らかとなった。 ・小学校第3学年の「音」のような日常生活との関連が深い学習では、子どもは発生要因である振動ではなく、「何をすると音が出るのか」を音の発生場面を優先して考えることがある。このような学習場面では、子ども個々の考えから披歴し合うことで、発生要因から自然現象を考えることを促す授業デザインが有効であることが明らかとなった。 ・理科学習での問題解決場面における子どもの情報の取捨選択における特徴を検証するために試行した小学校理科授業の分析から、他者の情報を選択する際は認知的側面だけでなく、情意的側面についても考慮すべきことが改めて明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では2020年度から2022年度の3年間の研究期間に、I.「協調的問題解決による社会的分散認知の共有や統合を目指した理科授業デザイン開発」、 II.「授業実践①と分析・授業デザイン改善」、III.「授業実践②と分析・授業デザイン検証」、IV.「成果公表(・まとめ)」の4つの研究プロセス(段階)で研究を進める予定としている。 そのうち、2021年度は上記I.~III.を実施する予定であったが,新型コロナウイルス感染症予防等の対策のために、予定していた義務教育諸学校等での授業実践を通したデータ収集とそれらの分析を進めることが、依然として、難しい状況であった。 研究の進捗状況としては、当初の予定から「やや遅れている」。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究での理科授業デザインの有用性等の検証のための授業実践によるデータ収集は、新型コロナウイルス感染症予防等の対策の観点から、これまでと同様に難しい状況にある。しかし、以前よりは感染予防の対策が進み、研究協力をお願いしている授業実践校を含めた研究環境については改善の兆しもみえつつある。研究協力者との打合せや研究協議を当初計画以上に詳細に積み重ね、研究データの収集方法や調査実施校(授業実践校)についても、量的な側面と質的な側面の両面から再検討するなどして、今後は研究の進捗状況の遅れを取り戻したいと考えている。
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Causes of Carryover |
【次年度使用額が生じた理由】 新型コロナウイルス感染症予防対策に伴い、研究実施に最低限必要な物品や書籍の購入に止めるようにしたことが、次年度使用額が生じた理由である。また、研究動向の調査や成果公表のために参加を予定していた学会がオンライン開催となったり、研究協力者との授業実践に関する研究打合せや研究データ収集等の回数を削減したり、次年度以降に開催できるように計画を変更したりしたために,2021年度に支出する予定としていた旅費の使用計画が変更となったことも、次年度使用額が生じた理由となっている。 【使用計画】 次年度は、当初計画に従い、研究環境等の整備に努める。また、研究打合せや成果公表のための旅費については、必要性を精査したうえで、研究目的が達成可能なように計画を修正し、適切に執行する。
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Research Products
(6 results)