2022 Fiscal Year Annual Research Report
米国カリフォルニア州における黎明期多文化音楽教育に関する基盤的研究
Project/Area Number |
20K02889
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
荒巻 治美 佐賀大学, 教育学部, 准教授 (40315180)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多文化音楽教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、米国カリフォルニア州における黎明期多文化音楽教育の基盤について明らかにすることを目的としている。本研究の課題は、科学研究費補助金による生活主義音楽教育に関する研究や、米国ワシントン州における多文化音楽教育に関する研究など、これまでの一連の研究成果を背景として、浮かび上がってきた。黎明期は、社会状況が急激に変化した時期である。とりわけ、カリフォルニア州は、太平洋や中南米などが近隣に存在するという地理的条件や歴史的条件により、多文化的視点から先鋭的錯綜的な問題が、存在していた。本研究では、当時の米国全体の社会的・歴史的展開や文化的背景、音楽教育の一般的動向を踏まえた上で、カリフォルニア州の音楽教育の在り方を多文化的視点から探究した。本年度、及び3年間にわたる研究では、これまで、収集済みの資料を確認し、分析を行うとともに、新たに必要となった資料についても、データーベースなどを活用しながら、収集を進めた。具体的・直接的な研究資料は、当時、出版された音楽教科書、教育研究紀要や音楽教育雑誌などに発表された音楽教育研究者や実践家などによる諸論文、州や郡、市の教育課程などである。様々な視点から音楽教育の在り方を構想したそれらの内容を精査し、多文化的視点から分類するとともに、検討を進めた。また、当時の社会でも、多様性自体に価値をおき、多様な文化の共存を唱える思想があり、それは、教育学者にも影響を与えていた。一方で、学校教育全体は、経験主義の原理に基づいて構想・実践され始める中で、音楽科では、当時の主流社会の音楽文化だけでなく、それ以外の音楽文化も視野にいれるようになってきた。しかし、それは、必ずしも本来の多文化音楽教育の理念に基づくものではなかった。黎明期以後の歴史的展開を明らかにしていくことが今後の課題である。
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