2020 Fiscal Year Research-status Report
Adaptation in School Subject "Japanese"
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20K02892
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
木村 陽子 大東文化大学, 文学部, 准教授 (20736045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 久美子 武蔵大学, 総合研究所, 研究員 (00879835)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アダプテーション / 国語教育 / 日本文学 / 伝統的な言語文化 / 学習指導要領 / 日本文化 / 再話 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究第1年目だったが、1年を通じてコロナ禍の影響を受け、当初の研究計画から大きく内容を変更したことを最初にお詫び申し上げる。今年度の研究実績は、大きく以下の2点にまとめられる。 (1)前研究課題(「表現メディアの特性と時代変遷の研究」15K02186)において行った文献収集や調査・分析に基づき、日本文学の作品群や作家を「アダプテーション」の視点から捉え直す試みを継続的に行い、成果の一部を以下2点の単著論文へと(国際学会誌1、国内学会誌1)結実させた。 ①「日本文学におけるアダプテーション-歴史的背景と三島由紀夫・安部公房の先駆的実践-」(2020年5月『日語教育学日本学研究』) ②「「再話」がつなぐ「感謝する死者」の物語-前川知大の演劇『奇ッ怪』と小泉八雲の「怪談」-」(2020年9月『昭和文学研究』) (2)本研究課題より研究分担者として加わった古典文学の研究者である石川久美子氏と月1回のペースで新旧の〔学習指導要領・国語〕に記述されたアダプテーション(翻案)への言及内容を確認する勉強会を実施し、基礎データの作成・分析を行い、成果の一部は石川氏が論文化した(2021年9月刊行予定)。勉強会の成果としては、近現代文学を研究対象とする申請者と、古典文学を研究対象とする石川氏とのあいだで、古典から現代に至る〈日本の言語文化〉のイメージのすり合わせや情報共有を行い、「アダプテーション」という視点に基づく新しい〈日本文学の通史〉の作成に向け、検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調に進展した理由は、大きく2点ある。第一は、本研究課題が前研究課題の最終年度の研究内容と概ね連続しているため、スムーズに研究成果へと結びつけることができた点である。 第二は、これまで個人研究のかたちで「国語教育とアダプテーション」研究を進めてきた申請者にとって、専門分野の異なる研究分担者を得たことで視野や守備範囲が広がり、「日本の言語文化」の内容理解がより深まった点にある。 ただし、順調に進展しなかった点もある。第一は、コロナ禍の影響を受け、新しい〔学習指導要領・国語〕の作成にかかわった国語教育関係者へのインタビューを今年度行えなかったことである。これについては、感染状況が好転し次第、速やかに実行へと移したい。 第二は、オンライン授業の準備をはじめとして、今年度は学内業務が想像以上に肥大化し、本研究課題から新たに着手する予定だった新しい〔学習指導要領・国語〕を対象とした調査が、思うように捗らなかった点である。状況は令和3年度に入ってもあまり改善していないが、次年度は可能な限り研究成果を外部に発信できるよう努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究課題としては、大きく以下の3点を目標として掲げたい。 第一に、「文学国語」「言語活動例エ」に資する教材の開発および成果を論文化することである。前掲「言語活動例エ」では「演劇や映画の作品と基になった作品とを比較して、批評文や紹介文などをまとめる活動」が求められているが、次年度は、前研究課題において坂口理子氏(高畑勲監督作品『かぐや姫の物語』の脚本家)に実施したインタビュー(2019年9月4日)の成果、および『竹取物語』のアダプテーション史における高畑勲作品の特徴や意義をアダプテーション理論に基づき論文化することから着手したい。 第二に、次年度も引き続き、原作とその映画化や演劇化された作品をアダプテーション理論に基づき分析する研究を続行したい。具体的な作家や作品の選定はこれからであるが、選定基準としては、①主として高校の国語教科書に今後取り上げられる可能性の高い作家であること、②これまでに最低3作以上、原作が映画化や演劇化、テレビドラマ化され、かつDVD化されている作家であることとする。 第三に、令和2年度に実施できなかった新しい〔学習指導要領・国語〕の作成に関係した国語教育関係者へのインタビューを実施したい。2021年5月時点でもコロナの感染状況は好転していないが、オンライン・インタビューやメールや電話での質疑応答などの方法も含めて、可能性を探っていきたい。
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Causes of Carryover |
今年度はコロナ禍によるインタビュー取材の中止や外出困難などの理由によって、当初予定していた研究内容に変更が生じた。そのため、インタビューにおいて発生するはずだった謝金や事前準備のための参照文献として購入予定だった各種教師用指導書などがなくなった。次年度使用額は、主として各種教師用指導書や参考文献の購入費、資料複写代に加えてインタビュー謝金や学会参加費などを予定している。
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