2022 Fiscal Year Research-status Report
Adaptation in School Subject "Japanese"
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20K02892
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
木村 陽子 大東文化大学, 文学部, 教授 (20736045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 久美子 武蔵大学, 総合研究機構, 研究員 (00879835)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アダプテーション / 国語教育 / 日本文学 / 伝統的な言語文化 / 学習指導要領 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究3年目である今年度の研究業績は、大きく2つの分野の次の4点(①~④)としてまとめられる。 長く日本文学史や国語教育において常識化していた明治期前後を境とする日本文学史における断絶史観が、前指導要領から現指導要領において、教育基本法の改定とも連動するかたちで、古代から現代まで日本文化の伝統が連綿と続いているという連続史観へとパラダイムチェンジしたということを解き明かした論考を、次の海外の学術誌に発表した。①「日本文学の〈伝統〉としてのアダプテーションー国語教育における連続史観へのパラダイムチェンジー」(「日語教育と日本学研究」(19)1-14/2022年12月)。 続いて、〈日本文学〉において縦横無尽の〈アダプテーション〉作品を展開した代表的な小説家である三島由紀夫と安部公房に焦点をあて、その〈アダプテーション〉のスタイルを比較分析した論考を、次の研究集会での招待講演で発表した。②「三島由紀夫と安部公房、アダプテーションの特徴」(大東文化大学人文科学研究所研究報告会/2022年11月)。 三島由紀夫については、史実に基づいた〈アダプテーション〉作品ともいえる演劇作品『白蟻の巣』について、先行論で見過ごされてきた虫をとりまく時代背景なども踏まえつつ分析した論考を、次の学術誌に発表した。③「三島由紀夫「白蟻の巣」論」(「國語と國文學」(62)107-121/2023年4月)。 さらに、自らの手による〈アダプテーション〉作品を多く手掛けた安部公房については、作家のその独自の思考過程を踏まえての『幽霊はここにいる』についての論考を、次の商業メディアに発表した。④「“幽霊”はここにいるのか?」(PARCO劇場『幽霊はここにいる』上演パンフレット/2022年12月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究3年目にあたる2022年度は、新しい高校国語の〈学習指導要領〉施行の初年度であり、〈アダプテーション〉のテーマが多く展開されている1年生向けの「言語文化」の教科書が入手可能となり、全9社、17種類の教科書を購入し分析を開始した。さらに、教科書会社の編集者へのインタビューも実施し、その編纂の背景にある考え方なども確認をし、前年度までに確認した〈アダプテーション〉を本邦の〈伝統的な言語文化〉として位置づけようとするこれまでの潮流との連関について分析した。 しかしながら、年度途中で、勤務校での昇任人事の対応に追われることが多くなり、投稿ができるレベルの論文としてまとめ切れずに今年度を終えた。 また、研究分担者である石川久美子氏については、古典文学における〈アダプテーション〉のテーマが新しい高校国語の〈学習指導要領〉にどのように展開されているかの論考を2021年9月に発表された成果を踏まえてさらに深化する予定であったが、育児休業に入られたことで、当該年度の論文発表には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を1年延長しての4年目にあたる本年度では、すでに考察を進めている〈高校国語〉の1年生向けの「言語文化」の教科書における〈アダプテーション〉の取り上げられ方の検証をさらに進めると同時に、新たに2023年度から入手可能となった2-3年生向けの「文学国語」の教科書もすべての版元の全種類を購入し、その分析も追加した論文発表を予定している。
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Causes of Carryover |
2022年度から施行された新しい高校国語の学習指導要領に基づく教科書の中で、2、3年次を対象とする「文学国語」、「論理国語」、「古典探究」については、2023年度にならなければ購入できないことを、本計画申請時には予見出来ていなかった。 このため、期間を1年延長させて頂き、これらの教科書だけでなく、関連資料の購入や、関連当事者へのインタビューなどの追加調査をすすめて参る所存。
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