2020 Fiscal Year Research-status Report
児童生徒の認知に基づく数学的な見方・考え方の育成に関する研究
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20K02895
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
二澤 善紀 佛教大学, 教育学部, 教授 (60633815)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 関数 / 認知 / 関数の学習モデル / 途上概念 / 平均変化率 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究成果を学術書としてまとめる活動を通して,数学教育学における認知に関するSkemp,van Hiele,Pirie & Kieren,Lakoff & Johnson,Lakoff & Nunez,松田らの先行研究,並びにこれらの先行研究に基づき設定した「関数の学習モデル」について,その妥当性と今後の課題について整理することができた。また,ドイツの関数学習に関し,ドイツの小学校教科書の分析を行った。その結果,ドイツの小学校では日本の「変化と関係」に対応する学習領域がないこと,一方で2つの変量の対応関係における規則やパターンを考察するような学習があることが分かった。 また,関数の重要な概念である平均変化率(変化の割合)に関し,その途上概念の特定と学習の枠組みについて検討した。本年度は理論面を中心に,(i)事象の変化を捉える平均変化率(変化の割合)の理解を促進する途上概念を特定すること,(ii)特定した途上概念を形成するための学習の枠組みを示すこと,(iii)途上概念を形成するための適切な教材の開発を目指した。(i)について,平均変化率の理解を促進する途上概念を明確に示すことはできていない。ただし,先行研究の分析から平均変化率を理解するための4つの概念を特定することができた。(ii)について,学習の枠組みの検討は次年度に行う。(iii)について,これまでの研究内容を分析し,平均変化率の学習だけに特化した教材ではなく,事象を量化して捉え2変量を関係付ける学習内容と関連付けた教材開発が適切であることが示唆されている。 実践面に関して,中学生を対象に,平均変化率(変化の割合)に関する認識調査を行うことができたが,詳細な分析とこれ以外の取り組みは次年度の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大にともない,2020年度は小学校,中学校,高等学校,大学の研究協力者との連携を取ることが困難であったこと,また国内外の学会、視察への出張を取り止めたこと,大学における遠隔授業の対応等で,研究の機会と時間の確保が困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
理論面について,ドイツの中学校の教科書分析を行い,「関数の学習モデル」に基づき変化の割合に関する教材と学習指導について検討する。 実践面について,2変数の対応に関する途上概念(平均変化率の考えを含めて)の形成には,「数値を用いない学習」から「数値を用いる学習」への段階的な学習指導が有効であることを検証する方法を考案し,教育実践と質問紙調査を通して明らかにする。 成果発表について,数学教育学会等の国内学会,ドイツ数学教育学会(GDM)等の国外学会に参加(オンライン)し,国内外の研究者と情報交換を行い,研究の推進を図る。
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Causes of Carryover |
国内外への視察及び現地での学会参加を自粛したため,次年度使用額が生じた。次年度は,国内外の視察及び現地での学会参加が可能ならば充当したい。そうでない場合は,遠隔での研究会を行うための環境整備,国際ジャーナルへの論文投稿に使用する。
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Research Products
(4 results)