2021 Fiscal Year Research-status Report
児童生徒の認知に基づく数学的な見方・考え方の育成に関する研究
Project/Area Number |
20K02895
|
Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
二澤 善紀 佛教大学, 教育学部, 教授 (60633815)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 関数 / 変化の割合 / 途上概念 / 数値を用いない学習 / 数値を用いる学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,関数的な見方・考え方を支える平均変化率(変化の割合)の理解促進のための学習方法の構築に取り組んだ。 まず平均変化率に関連する小学校,中学校の学習内容の整理と先行研究の分析を行った。小中学校の学習内容は系統的に配置されているが,平均変化率の理解の促進という観点からみると,学習指導上の工夫が必要であることがわかった。次に,全国学力・学習状況調査の結果を分析した先行研究から,関数領域において「できるけれど,分からない」という傾向が中学生にあること,変化の割合という用語の意味理解に課題があることが示された。その一方で,平均変化率を理解するための途上概念はある程度形成されていると確認できた。 そこで,先行研究の分析結果を検証するために関数の学習を終えた中学校第3学年の生徒を対象に,平均変化率に関し,基本的な用語,具体的な求め方,意味理解の程度を調べる調査問題を作成・実施した。その結果,平均変化率を求めることは可能でも基本的な用語と平均変化率の理解で重要な平均化の考えを十分に理解できていないことが示された。また,関数を学習前の中学生を対象に平均変化率を理解するための途上概念の形成の程度をみる調査問題を作成・実施した。その結果,途上概念が一定程度形成されていることが明らかとなり,先行研究から示された知見と合致する結果が得られた。 以上のことを踏まえ,中学生を対象に平均変化率の平均化に対する理解を促進できるような教材開発に取り組んだ。先の調査結果を踏まえ,関数学習の最初の段階である「数値を用いない学習」の段階は終了しており,「数値を用いる学習」の段階であると判断している。データの計測が容易で,計測時間の間隔の自由度が高い事象を教材とし,学習指導の方法を決定し,中学校第1学年を対象に予備教育実践を行った。詳細な分析は次年度の予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
小学校,中学校,高等学校,大学の研究協力者との連携に関し,年度の後半はオンライン会議システムの活用とオンライン研究会を立ち上げたことからある程度改善できたが前半は困難な状況が続き,研究協議ができなかった。また,国内外の学会,視察等の出張を取り止めたことから,十分な情報収集ができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
理論面について,海外(フィンランド)の小中学校の教科書を参考に分析を行い,「関数の学習モデル」に基づき関数的な見方・考え方に関する教材開発を目指す。 実践面について,今年度末に実施した予備教育実践の結果を分析し,平均変化率の理解を促進できるような新たな教材と学習方法を検討する。さらに,教育実践を通してその有効性を検証する。 成果発表について,数学教育学会等の国内学会,ドイツ数学教育学会(GDM)等の国外学会に参加(対面またはオンライン)し,国内外の研究者と情報交換を行い,研究の推進を図る。
|
Causes of Carryover |
研究協力者と対面での研究協議,国内外への視察及び現地での学会参加を断念したことから,次年度使用額が生じている。次年度は,国内外の視察及び現地での学会参加が可能ならば充当したい。そうでない場合は,文献等の収集と遠隔での研究会の充実を図ることに使用する。
|
Research Products
(4 results)