2021 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な学校動物飼育プログラムの開発と評価―ホスティング方式の構築と効果検証
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20K02896
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Research Institution | Otemae University |
Principal Investigator |
中島 由佳 大手前大学, 現代社会学部, 教授 (80712835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀井 暁子 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 教授 (80711754)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ホスティング飼育 / 学校動物 / 児童への心理的効果 / 動物愛護 / 教育プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
ホスティング方式の飼育実施:選定されたホスティング飼育校との打ち合わせを4~5月に行い,幼獣およびケージ・エサ等の購入,幼獣の慣らし飼育を経て6月より各校での飼育を開始。「長期休業および3連休は獣医師がホスティングを行う」との当初の計画に原則沿って進められた。獣医師による検診や飼育方法についての講話・指導も各小学校で行われた。 調査:児童への質問票によるデータ採集が飼育前(5月),夏季休業前,飼育終了時(3月)の3回,各校にて行われた。獣医師に対しては適時,ホスティングの状況・問題点について聴取を行い,ホスティング飼育の問題点を探った。10月にはホスティング飼育校の1校と飼育や児童の様子,飼育の問題点等について協議を行った。また年度末にはホスティング飼育校3校と,今年度の総括,生活科の授業における成果,飼育実施・授業への取入れにおける利点および問題点,次年度に向けた課題等を協議した。2021年5月および8月,2022年3月の3回,zoomによる推進会議が行われ,状況報告,問題点等に関する情報共有を行うとともに,今後の進め方について協議した。 また,緊急事態宣言に伴う休業中および再開後の動物飼育に関する状況について各地の小学校約260校にアンケート調査を送付して回答を得た。その結果について2021年9月の第24回全国学校飼育動物研究大会にて口頭発表を行い,成果は新聞にて報道された。またテレビにおいてもコロナ禍を受けての学校動物飼育の現状について解説を行った。 本年度における研究の意義と重要性:「ホスティング飼育」を着手・実行し,飼育校数が減少の途にある学校動物飼育の打開策となりうるか,検証を開始した。また,コロナ禍下における学校での動物飼育に関する調査を行い,学校の取り組み・懸念等を社会に公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ホスティング飼育のための小学校を募るにあたり,今般のコロナ禍下の状況において,各地域の教育委員会,研究協力者である各地域の獣医師との打ち合わせを行いにくい状況にあった。またコロナ禍に伴い動物飼育に関する行事(ふれあい教室など)を控える小学校も多く,コロナ禍を受けて動物飼育活動を控える傾向が各地域で広がる中で,新規の動物飼育に手を挙げる小学校が当初の見込みよりはるかに少なく,計画の実施が一時は危ぶまれた。当初4地域4~5校でホスティングを行う計画であったが,結局,3地域3校でのホスティング実施へと,計画規模の縮小を余儀なくされた。また,実施する小学校決定の遅れを受け,2020年度3学期に着手する予定であった飼育開始の準備(動物等の購入,幼獣の慣らしなど)が2020年度末までに実行できなかった。結果として2カ月程度の遅延が発生し,データ採集に影響が生じた。ホスティング実施にあたっても,コロナ禍に伴う移動制限のため,各地の教育委員会・小学校・獣医師とは初対面の研究代表者がリモートにて協議に参加せざるを得ず,ラポールの形成や打ち合わせに支障が生じなかったとは言い切れない。ホスティングを行う環境等について知識の取得,円滑な運営や協力体制の構築に後れを来した。 動物飼育・教材としての活用においても,コロナ感染の蔓延により休校が続き,結果的に教科教育にホスティング飼育における動物飼育を教材として利用できなかった小学校,コロナ感染に関わる学級閉鎖により,児童がホスティング飼育している動物と十分に触れ合えない状態が続いた学校があった。 また,「コロナ禍に対応した学級運営・授業準備等に忙殺されていること,そのため複数の動物が病気になった時の対応まで手が回らない」等の理由でホスティング飼育を辞退する小学校も生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
本計画開始当初より,コロナ禍等の影響によりホスティング飼育の協力校は少なかった上に,来年度に向けたホスティング飼育の辞退を申し出る学校も出現した。このため今後新たなホスティング飼育を行う学校を募る必要が生じたが,コロナ禍下での新規の動物飼育に着手できる小学校の確保が難しく,また募集の要となる獣医師が家族の不調により十分に関与できず,遅延している。 今後は,一定数のホスティング飼育校を確保できるよう,獣医師や既にホスティング飼育を実施している学校等の伝を頼って小学校に働きかけ,ホスティング飼育校を新たに開発する予定である。また,現在調査に参加している小学校のうちの1校は,ホスティング飼育でなく教員による持ち帰り飼育を行っている。このため,ホスティング飼育と持ち帰り飼育の効果の比較も行う必要が生じた。今後,統計分析に耐えうる標本数確保のために,柔軟な計画変更も視野に入れる必要がある。具体的には,ホスティング飼育校の数の確保が十分でないことを受け,今後新たに「ホームステイ(長期休業中に獣医師が預かるのではなく,児童あるいは教員が動物を預かる)」の形をとる小学校に調査を依頼し,データ採集を開始する計画も視野に入れている。 一方で,先行き不透明な部分はあるにせよ,対面にて各地域間での情報共有が可能となりつつある。例えば学会等において,ホスティング飼育において得られた知見を研究者からの立場だけでなく,複数の小学校,獣医師など様々な立場から報告し,ホスティング飼育の利点,問題点,教育における活用等について協議することを次年度の活動として予定しており,ホスティング飼育による学校動物飼育の新たな教育活用の形について合意形成を行う上で重要である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響を受け,初年度内にホスティング飼育を行う学校の選定が完了できず,本来必要となる経費の支出がなく,大幅な繰越となった。本年度は,ホスティングに使用する動物の購入および慣らし飼育,エサや住居の購入,獣医師による動物の預かり(ホスティング)や検診および小学校での講義等の支出があり,初年度よりの繰越金の消化に努め得たものの,全額を消化するには至らず,次年度使用額が生じた。次年度以降も飼育に必要となる器具の購入,獣医師によるホスティング飼育・検診・講話等に加え,データ入力のための人件費等の支出を計画している。
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