2020 Fiscal Year Research-status Report
ネットやゲーム依存の児童生徒に実施するキャンプ療法の効果測定とプログラム開発
Project/Area Number |
20K02897
|
Research Institution | Kobe Shinwa Women's University |
Principal Investigator |
金山 健一 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 教授 (80405638)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 和雄 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (10639058)
栗原 慎二 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (80363000)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | インターネット依存 / ゲーム依存 / キャンプ療法 / ピアサポート / 大学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年、厚生労働省は病的なネット依存が疑われる中高生が5年間で52万人から93万人に急増したと発表した。それは中高生全体650万人の7人に1人が当たる計算となるが、有効な対応方法、改善プログラムの確立はできていない。本研究の目的は、「ネットやゲーム依存の児童生徒に実施するキャンプ療法の効果測定とプログラム開発」である。キャンプの参加者はネット利用をやめらない小学生3名、中学生3名、高校生3名が参加した。
①キャンプ実施前後のインターネット利用時間の調査では、3時間以上の長時間利用者の数値が減少しており、キャンプの活動を通してネット利用法に改善があったことがわかった。②インターネット利用時間の変化の平均は1時間9分の時間減少となり、キャンプ活動における効果だと考えられる。③「インターネット依存」の概念を提唱したキンバリー・ヤング(Kimberly Young)が作成したDQ(Diagnostic Questionnaire)インターネット依存アンケートでは、キャンプ実施前後では、ネットに嗜癖してしまう状態について9名中6名が減少しており、オフラインキャンプ参加をきっかけに、日常生活を見つめ直し、改善が図られていると推察される。④インタビュー調査の結果では、振り返りの時間の参加者同士の意見交流が効果的という意見が多くあがった。このことから、日常生活におけるネットの利用法を、同年代の参加者と意見交流をすることがネット依存改善に効果的なものではないかと考えられる。⑤キャンプでは大学生による体験的なピアサポート活動により、たくさんの充実感を味わうことができ、ネットを利用しなくても喜びを味わうことができたことが大きな要因となったと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネット依存に対するキャンプ療法は、日本で初めてネット依存外来を始めた久里浜医療センターの指導の基に、医療モデルで実施された。場所は静岡県と群馬県の青少年自然の家で8泊9日で行われた。ネットやゲームに依存する児童生徒は全国にいるため、地域が遠く参加できない児童生徒もいる。また、8泊9日という期間も長く、児童生徒や保護者の負担も多い。 本研究においてピアサポートを学んだ大学生が、児童生徒を支援する教育モデルのキャンプである。参加者同士が協力しながら実施する自然体験活動、大学生メンターによる半構造化インタビューによる振り返りや参加者同士の意見交流等を実施する。これらのプログラムを通して参加者が充実したリアルを体験しながら、日常生活を振り返り、今後の行動改善につながるなどの効果が確認された。また、認知行動療法やピアサポートの考え方に基づく対応を学んだ大学生メンターが、大人でもない子どもでもない「ナナメの関係」から参加者に接したことが、参加者に好影響を与えていた。 一方、ネットの問題は、日常生活の様々な問題が背景となっており、問題の解決には、本人だけではなく家族も一緒になってネット依存に取り組んで行かなければならないことがわかっている。しかし、キャンプが終了し家庭に戻ると、また、ゲーム・ネット依存になってしまう傾向がある。キャンプに参加した児童生徒が、日常生活に戻ってからのネット・ゲーム依存の状況の縦断的追跡調査を実施する。ゲーム・ネット依存に関しては、環境整備が必要であるとともに、その対応策は今後の研究の中で明らかにしていきたい。 今の段階の仮説では、キャンプに参加した児童生徒をキャンプのリーダーとして再度、キャンプに参加させることにより、ネット・ゲーム依存に当事者性を持って参加することにより、改善の方向性が見いだせるのではないかと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
日本でのネット依存に対するキャンプ療法では、国立病院機構久里浜医療センターが実施する医療モデルでにキャンプがある。教育モデルのキャンプには、秋田県教育委員会の「うまほキャンプ」、神奈川県教育委員会の「チャレンジ・ライフ・キャンプ」などがある。日本では実践事例が少なく論文もわずかで、効果測定・プログラムの確立も十分とはいえない。 国立病院機構久里浜医療センターの報告(2017)は、キャンプ活動でのネット依存の治療法に関しては、その方法や有効性に関する研究の蓄積も世界的に乏しい。海外の動向を報告した研究でも、心理社会的治療の有効性は認められたが、解析の対象とした研究は全般的に研究対象者数も少なく、方法論も確立されていないという。ネット依存のキャンプ療法の研究は、論文数も少なく萌芽期であるといえる。 そこで本研究では、日本のキャンプ療法を比較検討し、海外の研究も視野に入れ、ネットやゲーム依存の児童生徒に実施するキャンプ療法の効果測定とプログラム開発を実施し目指す。本研究では、医療モデルのキャンプ療法による治療ではなく、教育モデルのキャンプ療法の確立し、各自治体・各学校でも実施できる汎化もモデルを検討したい。
|
Causes of Carryover |
コロナのために当初予定していた、視察ができなかった。次年度はコロナの状況次第で、視察に行く予定である。
|
Research Products
(1 results)