2021 Fiscal Year Research-status Report
ネットやゲーム依存の児童生徒に実施するキャンプ療法の効果測定とプログラム開発
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20K02897
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Research Institution | Kobe Shinwa Women's University |
Principal Investigator |
金山 健一 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 教授 (80405638)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 和雄 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (10639058)
栗原 慎二 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (80363000)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ネット依存 / ゲーム依存 / 児童生徒 / キャンプ療法 / 縦断的追跡調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は、「ネットやゲーム依存の児童生徒に実施するキャンプ療法の効果測定とプログラム開発」である。2018年、厚生労働省は病的なネット依存が疑われる中高生が5年間で52万人から93万人に急増したと発表した。それは中高生全体650万人の7人に1人が当たる計算となるが、有効な対応方法、改善プログラムの確立はできていない。 2021年度の研究実施計画では、キャンプ療法に参加した児童生徒の3年間の縦断的追跡調査を実施した。調査対象は、2016~2021年度のキャンプ参加者(当時、小中高校生61名)及びその保護者に対してアンケートを実施した。質問項目は、キャンプ参加者の生活の改善状況を、キャンプ参加直後と現在の状況について4件法で回答した。参加者の改善率(キャンプ直後、現在)は、①日常生活(81.0%、81.0%)、②イライラする(71.4%、75.0%)、③保護者との関係(77.3%、76.2%)④学校生活(59.1%、66.7%)、⑤学校への登校(66.7%、75.0%)、⑥ネット利用時間(61.9%、55.0%)、⑦ネットへの課金(78.9%、78.9%)であった。キャンプ直後だけでなく、現在も高い改善率を維持している項目が多いことから、キャンプ参加をきっかけとした改善傾向は持続していると考えられる。保護者からみた子どもの改善率(キャンプ直後、現在)は、①日常生活(62.5%、47.8%)、②イライラする(65.2%、69.6%)、③保護者との関係(70.8%、68.0%)、以下、略。 保護者の回答では、参加者の回答と比較して、全体的に改善率が低いが、参加者回答の集計結果と同じく、現在も改善率を維持している項目が多い。参加者と保護者の回答の改善率の乖離については、保護者は我が子への期待感があるため、参加者本人の実感よりも厳しい評価となっているのではないかと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では3つの調査を実施する。 Ⅰ基礎調査…ネット・ゲーム依存の児童生徒が参加したキャンプ療法の効果の検討。Ⅱ縦断的追試調査…キャンプ療法に参加した児童生徒の3年間の縦断的追跡調査。Ⅲ海外実施調査…海外で実施されているネット依存改善のキャンプ療法の調査研究。 以上の研究から、ネット・ゲーム依存の対応を、医療モデルによる治療ではなく、教育モデルによるキャンプ療法での改善方法の確立を目指す。医療モデルとは、対象が個々の患者で、医師が投薬治療や心理療法をする。本研究の教育モデルとは、対象が集団で、大学生ピアサポーターが、リアルな体験活動やカウンセリングを実施した。 研究では、Young K(1998)が開発したインターネット依存を測定するDiagnostic Questionnaire for Internet Addiction(DQ)(8項目)、金山・竹内(2016)が作成した児童生徒用ケータイ・スマホアンケート(21項目) を用いた。調査協力を得た小学生(4~6年生)、中学生、高校生は合計9,814名、また、その保護者、合計5,610名である。依存傾向のある児童生徒は、睡眠が少なく、イライラする傾向があり、勉強にも自信がなく、ネットのフィルタリングをしていないことが判明した。 研究の進捗状況では、コロナ禍のため日本国内のネット依存対応のキャンプの調査ができなかった。同様に、コロナ禍のために、海外で実施されているネット依存対策のキャンプ療法の調査研究も実施できていない。今年度は、コロナの状況をみて、日本国内、海外の調査を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
日本のネット依存に対するキャンプ療法の研究は少ない。ネット依存に対するキャンプ療法は、日本で初めてネット依存外来を始めた国立病院機構久里浜医療センターが医療モデルで、静岡県と群馬県の青少年自然の家で実施した。ネットやゲームに依存する児童生徒は全国にいるため、地域が遠く参加できない児童生徒もいる。また、8泊9日と期間も長く児童生徒や保護者の負担も多い可能性もある。教育モデルのキャンプには、秋田県教育委員会の「うまほキャンプ」、神奈川県教育委員会の「チャレンジ・ライフ・キャンプ」などがあるが、日本では実践事例が少なく論文もわずかで、効果測定・プログラムの確立も十分とはいえない。 また、海外のネット依存に対するキャンプ療法象の動向の報告も少ない。海外の動向を報告し、心理社会的治療の有効性は認められたが、解析を対象とした研究は全般的に研究対象者数も少なく、方法論も確立されていないという。ネット依存のキャンプ療法の研究は、論文数も少なく萌芽期であるといえる。 そこで本研究では、「ネットやゲーム依存の児童生徒に実施するキャンプ療法の効果測定とプログラム開発」を実施し、医療モデルのキャンプ療法による治療ではなく、教育モデルのキャンプ療法の確立を目指す。本研究によりネット依存のキャンプ療法の確立し、青少年の健全育成に寄与することを最終的な目的とする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために日本国内で実施されている、ネット依存対応のキャンプを調査することができなかった。同様に、海外のネット依存対応のキャンプも調査をすることができなかった。そのため、次年度使用額が生じてしまった。今後、コロナも回復傾向に向かえば、日本および海外の調査も可能となり、予算を執行をする予定である。
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Research Products
(1 results)