2022 Fiscal Year Research-status Report
生活や社会とのかかわりを視点としたドイツの音楽科教育に関する研究
Project/Area Number |
20K02908
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中島 卓郎 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (20293491)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 音楽科教育 / ドイツ / 海外連携 / 社会 / 生活 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ドイツの音楽科における「生活や社会の中の音や音楽」に関係する学習のうち後期中等教育段階に係る部分に焦点化し、学習内容および方法を解明することによって汎用的能力の育成について明らかにした。研究対象は次に掲げる教科書である。これはドイツで広く使用されているものである。『Musik um uns SekundarbereichⅡ(Schroedel社)』 上記の研究対象の中から「生活や社会と音楽とのかかわり」に関係する部分を抽出し、分析・考察した。その結果、学習内容は、日本の大学レベルに相当するような心理学的アプローチ法をはじめ、高度な内容に発展していることが明らかとなった。 ①「音楽の機能・効果」では、身体的反応、歌唱による身体機能の変化、一定の機能を果たすための前提条件、音楽療法などが扱われ、ポラリテーツ・プロフィール・テストや医学的作用等にまで言及されていた。②「特定の目的を有する音楽」では、広告・デパート・サウナ・TVショー・コンピュータゲームのBGM、特定の雰囲気づくり、CMにおける音楽の役割等を扱い、日常の生活に直接結びつく内容として、音楽の音量や速度が人に与える影響、群衆同一性、行動の同期化と関連させるものであった。③「政治・権力」では、音楽と軍隊・儀式、音楽の政治的影響力、9.11テロ等を社会の背景や楽曲とのかかわり、具体的な音楽家の活動等と関連付けて扱っていた。 学習方法としては、学習内容に関連する事柄を調査・討議させるなど、学習者自身が主体となって学ぶ授業が展開される。特定の楽曲について学ぶだけではなく、学習内容に沿って結果的に様々な音楽や多くの情報、考え方に触れるのである。したがって、学習内容は限定的なものではなく広がりを見せ、他者との討議を経て思考が深まり、汎用的能力の育成に繋がっていくことなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基礎疾患者であり、新型コロナ感染防止の観点からドイツへの渡航が不可能となり、現地授業視察等が行えなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度は6月にドイツ(ベルリン)に渡航し、研究協力者へのインタビューや情報交換等を行う。また現地ギムナジウムの許可がおりれば授業視察を行わせていただく。
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Causes of Carryover |
コロナ感染予防の観点で渡欧できなかったため次年度使用額が生じた。23年度は6月にドイツ(ベルリン)に渡航し、研究協力者へのインタビューや情報交換等を行う。また現地ギムナジウムの許可がおりれば授業視察を行わせていただく。
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