2021 Fiscal Year Research-status Report
インフォーマルな表現からプリフォーマルな表現への移行を促す割合指導に関する研究
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20K02909
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
山田 篤史 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (20273823)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プリフォーマルな表現 / インフォーマルな表現 / 割合指導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,正式な「割合」指導に先だって児童が持ち得る割合に関わるインフォーマルな表現を調査し,そうしたインフォーマルな表現を構成・使用・解釈できるような割合の素地指導を事例的にデザインしつつ,割合に関わるインフォーマルな表現からプリフォーマルな数学的表現への移行を促す指導の在り方について検討することを目的としている。昨年度は,その第一段階として,正式な「割合」指導に先だって児童が持ち得る割合に関わるインフォーマルな表現を文献により調査した。 今年度は,教科書に従った正式な第5学年での割合指導がなされる前のあるクラスの児童に,(1)「黒のテープの長さは白のテープの長さの3倍」と「黒のおもりの重さは白のおもりの重さの3倍」が表す状況について絵・図・言葉・式などを使って説明してもらう自由記述の問題,(2)平成28年度全国学力・学習状況調査算数A8問題,(3)平成24年度全国学力・学習状況調査算数A3問題を解いてもらい,その解答を分析した。 上記調査においても,問題(3)におけるテープ図と倍を表す数直線を組み合わせた図(日頃から見慣れないプリフォーマルな表現)は有効に機能していない可能性が高いことが確認できた。また,問題(2)の結果からは,2本のテープの長さの量的関係を捉える所に児童の困難があることが示唆された。その結果は,倍・割合に関するインフォーマルな表現の抽出を狙った問題(1)における「白黒のおもりの重さの関係を説明する際に「3倍」のような数的関係表現を欠いてしまうことがある」という結果と整合していた。これらの結果に関する考察から,インフォーマルな表現に具体的な数的表現を徐々に混入させるという,指導の方向性が示唆され,調査対象の児童に馴染みのある関係図の導入時の指導に関して,指導の道筋を示唆することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的は,1年度目と同様,算数における正式な指導に先だって児童が持ち得る様々な割合に関わるインフォーマルな表現の発掘・収集に努めながらも,そうしたインフォーマルな表現を構成・使用・解釈できるような割合の素地指導を事例的にデザインしていくことを主な目標にしていた。 そこで,知己の現場教員の協力を得て,少数の被験者ながら,児童の具体的な倍・割合に関するインフォーマルな表現の抽出を試みる調査を行った。また,その結果に基づいて,5年生の正式な割合指導前に「倍の見方」を養うことができるようにするための指導の道筋について示唆することが出来た。より下学年からの,倍・割合についての包括的な素地指導という形にはならなかったし,特定の教科書に頻出する関係図に至る指導であるという点では議論はやや限定的ではあるものの,倍・割合に関する児童のインフォーマルな表現からプリフォーマルな表現(関係図)へ至る指導の道筋を具体的に示唆できたことは,一定の成果であったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,知己の現場教員から,割合指導に有望な表現・活動を使用した指導系列のデザインに関して助言を得つつ,割合に関わるインフォーマルな表現からプリフォーマルな数学的表現への移行を促す指導の在り方について検討する。その際,昨年度の調査結果から得られる示唆や実際の児童が持っているインフォーマルな表現に基づいて,例えば,デザインされた活動が有効に機能しうるか,授業に持ち込まれたインフォーマルな表現はどのように修正・洗練されるか,などような観点から,指導の在り方を更に検討していくことにする。
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